インタビュー

GOING UNDER GROUND

たまに〈初期衝動を取り戻した……〉って言われることもあるんですけど、最初のころの温度は一生出せないものだと思うし……。


 その、琴線に触れるメロディーと言葉をして、〈泣きのバンド〉とも言われる5人組、GOING UNDER GROUND。彼らの音楽には常に若さゆえのピュアネス、もしくはセンチメンタルでナイーヴな感性……云々という注釈が付されている。

「いいメロディー、もっと言ってしまえば、日本人が書くいいメロディーが好きなんですよ。それを突き詰めた結果、僕らの音楽が〈胸キュン〉とか〈泣きのメロディー〉と受け取られるのかな、と。そう受け取られることはイヤじゃないですね」(松本素生、ヴォーカル/ギター:以下同)。
 
 バンドのソングライターである彼はあっさりとそう答えてくれたが、インディーでリリースされたファースト・ミニ・アルバム『Cello』から約5年を経た彼らは、当然、昔のままの彼らではない。完成した通算4作目となるニュー・アルバム『ハートビート』を前に、彼は言葉を続ける。

「ただし、いまは本能的に音楽を作っているわけではなくて、頭で計算しながら作っているんです。バンドっていうのは、最初は瞬発力で曲を作ったり、偶然作った曲が名曲になったりしますけど、活動を続けていくと、そういうやり方に満足できなくなってくるし、一方でかつての初期衝動にはかなわないなっていう思いもある。たまに〈初期衝動を取り戻した……〉って言われることもあるんですけど、最初のころの温度は一生出せないものだと思うし、出せないからといって、エグいことを赤裸々に書けばいいかというと、音楽は素敵じゃないと駄目だし、それも違うなと思うんです。じゃあ、どうするか? いまはまさにその狭間にいると思うんですけど、少なくとも、初期衝動に寄りかかって音楽をやってると向上しねえな、と。それは今回のレコーディングで気付きましたね」。

 そのために、彼らは冷静に、慎重にレコーディングを進めていったというが、ZOOT16のキャップを被って取材現場に現れた松本は、相変わらずさまざまな音楽を聴いてはいても、自分たちの作品でできることできないこと、やるべきことやる必要のないことを見極め、ギター・バンドであるという本来の音楽性を大きく逸脱することがない。

「そのうえで〈こういうことを伝えたい〉っていうときに、ただ自分の日常を垂れ流すんじゃなくて、ドラマやストーリーがあったほうが伝わるなら、それをちゃんと用意するっていう。ただし、〈こんな手法で一枚作る〉みたいな〈方法論〉に逃げないよう頑張りましたね。ゴールが見えてる方法論だったら、それはそれでいいと思うんです。でも、自分が音楽を聴いてきた経験上、ゴールを探すための方法論で臨んだら、バンドは終わりですよ。だから、そこはあくまで自然にやりました」。

 それはつまり、作家性とそこからはみ出るバンドの熱をバランスよく作品化するということを意味している。先行シングル“トワイライト”のプロモ・クリップ撮影を、親交の深いCMディレクター、中野達仁に依頼したのも、そのバランスを考えてのことだ。

「あのプロモ・クリップのストーリーや風景は、俺のなかにはないものなんです。でも、ファンだったらわかるであろう曲の原風景は、それ以外の人にとっては濃すぎてわからないかもしれない。そう考えると、こういうプロモ・クリップが出来るんだな、と。それがつまり、人にものを伝えるっていうことですよね」。

 表現者としての自覚に芽生えた本作で、彼らはナイーヴでセンチメンタルなバンド像に別れを告げる。

「このアルバムは、いろんな選択肢から〈これだ!〉と選び取ったものを詰め込んだという意味で、いままで僕らが作ってきたどのアルバムよりも純粋だし、これが完成したことで、GOING UNDER GROUNDにはまだまだ先があるな、と思えましたね」。

▼GOING UNDER GROUNDのアルバムを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年10月30日 11:00

更新: 2003年10月30日 18:05

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/小野田 雄