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インタビュー

KAZAMI


「もしかしてkazamiはアルバムを出さないアーティストなのかな?って(笑)。自分でもそう思っていた時期があるぐらい、長い時間をかけて完成させたアルバム。なので、1曲単位でスゴーク濃ゆい内容になりました」。

 デビュー・シングル“Dreamer”から3年、kazamiがついにファースト・アルバム『Sprout』をドロップした。既発のシングル曲に加え、DJ TAKI-SHITやAKIRAによる好リミックスが収録されているなか、いちばんの聴きどころは「1曲目の“Dreamer”と2曲目の“リズム”。この2曲を聴けば、kazamiの成長具合がわかるはず」。彼女が胸を張ってそう語るだけのことはある。そこでは3年間で格段とアップした歌唱力の差異が歴然、同一のシンガーが歌っているとは思えぬほど、情感豊かな歌声を披露しているのだ。そもそもkazamiのヴォーカル・スタイルに変化が訪れたのは、4枚目のシングル“chimeless days”のあたりから。その曲をプロデュースした藤本和則との出会いがやはり彼女に多大な影響を及ぼしたらしい。

「藤本さんと出会う前はアッパーな作品ばかり出してたんですよ。でも、藤本さんの薦めでバラードに初挑戦して、〈抑制して歌う〉というテクニックを学んだことが凄く大きかった!」。

 除々に勢いづいてきた彼女に拍車をかけたのが、SPHERE of INFLUENCEをフィーチャーした“リズム”だ。

「SPHEREと出会う前の歌詞は全然ダメで(笑)。何を伝えたいのかがわかりづらい詞しか書けなかったんですよ。でも、自分のライフスタイルをそのまま書いているSPHEREのリリックを見ることで、自分が本当に伝えたいことや言いたいことを詞に書けるようになった。その頃から自分のモチベーションもどんどん上がってきたんです」。

 作品を制作するごとに、メキメキとスキルに磨きをかけてきた彼女。そんなkazamiの本領を堪能できるのが、Miss Mondayをフィーチャーした最新曲“Sprout”だ。TSUTCHIE(SHAKKAZONBIE)が手掛けた、TLC“Waterfalls”を彷彿とさせるメロウなビート、ポジティヴなメッセージに心躍らされる歌詞、そして豊潤なファルセット・ヴォイスが美しい融和を果たしており、一語一句を丁寧に歌い上げる彼女の唱法からは、早くもシンガーとしてのスタイルが確立された感すら受ける。

「そう! 詞のひとことひとことを大切に歌うのが私のスタイルなんです。“Sprout”って声の音程が少しでもズレると気持ち悪いトラックになっているから、実は歌入れに苦労したんですよ……。で、もっと自分はできるはずなのに!って思うようなヴォーカル・ワークを、例えばPUSHIMさんとかはできている。そんな感じで素晴らしいシンガーがたくさんいる、ということに対して凄く悔しくなりますね。あと、私にはクラブでのライヴ経験が少ないから、クラブのステージでも失敗したことがあるんですよ。でも、ラッパーとの共演を経て、今後はクラブのキャリアも積んでいきたいなって思いました」。

〈いつだって光だけを目指し伸びていく花〉と“Sprout”の詞にあるように、あらゆる経験をバネに次の構想へとコネクトしていこうとするkazami。そんな彼女のスタンスをアルバム・タイトルが実にうまく言い表している。

「『Sprout』の意味は〈新芽〉。アルバム制作を通じて、いろんな人と出会い、そしていろんなジャンルに挑戦した結果、自分の引き出しが広がってきたから。『Sprout』をスタート地点にどんどん新しいことにトライしていきたいですね」。

PROFILE

kazami

  86年生まれ。オーディションをきっかけに、2000年にシングル“Dreamer”でデビュー、当時14歳とは思えない歌唱力で話題を集める。その後もリリースを重ね、およそ1年の充電期間を挟んで、2003年1月に藤本和則プロデュースによる4枚目のシングル“chimeless days”をリリース。同6月にはSPHERE of INFLUENCEをフィーチャーした“リズム”、7月にTVドラマの主題歌としてヒットした“I Say A Little Prayer”、9月にはkazami with HOME GROWN名義での“Moments in The Sun”と音楽的なヴァラエティーを増しながらシングルを意欲的に連続リリース。このたび、TSUTCHIEやAKIRA、Miss Mondayらも参加したファースト・アルバム『Sprout』(ソニー)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年11月06日 13:00

更新: 2003年11月06日 17:27

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/金田 美穂子