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インタビュー

Polaris

シングル“深呼吸”“檸檬”を経て、新たなフォームを創造するポップ・ユニットが新作を放つ!


「今日、いい天気ですね。ここまで自転車で来たんだけど、めちゃめちゃ気持ち良かったなぁ」(オオヤユウスケ、ヴォーカル/ギター)。

「うん、今日の太陽は気持ちいい。毎日見てると微妙に違うんだよね、太陽の光って」(柏原譲、ベース)。

 いきなり天気の話をはじめるオオヤ&柏原。でも、そんな〈感じ〉はPolarisのセカンド・フル・アルバム『Family』と無関係ではない。

「朝の10時ぐらいに集合して。で、夕方の6時ぐらいには終わる。そういうレコ-ディングでしたね。だから今みたいな昼間の光のなかで作業をしました。ちょうど陽が入ってくるスタジオだったし」(オオヤ)。

「そういう環境でやりたかったんです。太陽が昇ったら起きる。沈んだらもう活動しない。うちは3人とも、わりとそんな感じで普段も生活してるんで」(柏原)。

「そう。だから最近はライヴ終了後の打ち上げのときとか、すごく眠いんだよね(笑)」(オオヤ)。

 それってミュージシャンらしくないというか……。

「ミュージシャンらしくないかもしれないけど、でも人間らしいでしょ(笑)。そういう普段の生活と同じリズムで音楽を作りたかったんですよ」(柏原)。

 そんな新作。これまでの延長線上にあるダブをベースにしたポップスはもちろん、それに加えて興味深い新たな表情も見せてくれる。その代表的なものが、本作からの先行シングル“檸檬”にも導入されていた生のストリングスとブラジリアン・テイストである。

「たまたま今回から弦が入ったけど。でも以前からPolarisのサウンドに合うだろうとは思ってて」(オオヤ)。

「ブラジル音楽にナチュラルさを感じるんです。で、その耳で欧米の音楽を聴くとすごく作為的に感じて、ちょっと嫌になっちゃうことがあって。だから、そのあたりに対する反抗みたいな気持ちもありつつね」(柏原)。

 これまでは〈浮遊感〉という言葉で語られることが多かったPolarisだが、しかし今作は、ちゃんと地に足が着いているような印象がある。これも大きな特徴だ。

「あ、それは心掛けたポイントかもしれない」(オオヤ)。

「録音に関しても、わりとリアリズムっていう部分を意識したし。あと同じスタジオで同じエンジニア(もちろんZAK。今作には共同アレンジャーとしても参加)で録ったのも大きい。やっぱり統一感が出るよね」(柏原)。

 それと同じくオオヤユウスケのヴォーカルも、それから歌詞の世界観も、よりくっきりとした輪郭を獲得。

「詞を書くときの自分の目線を、今回は普段の生活に近いところに設定してみようって思ったんですよ。たとえば自分が歩いてる速度に近い感覚で言葉を選んでいくとか、そんな感じで」(オオヤ)。

 朝。散歩。Polaris。こんなふうに単語を並べるとシリトリをして遊んでいるみたいだけれど、でも実際この『Family』は、晴れた日の朝早くに屋外で聴くと気持ち良さが倍増するアルバムだと思う。どの楽曲も、まるで〈平常心の美学〉を追求しているような日々の営みへの深い愛情でキラキラと輝いているからだ。

▼Polarisの近作を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年11月06日 15:00

更新: 2003年11月27日 16:30

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/大野 貴史