インタビュー

ワイヨリカ

二人の原点――〈アコースティック・ギターと歌〉を見つめ直したサード・アルバム!!


  豊かな果実の実り。シンプルだけど芳醇な味わい。wyolicaのサード・アルバム『fruits & roots』が完成した。セカンド・アルバム『almost blues』以後、今作のレコーディングを中断して、全編アコースティック・セットで臨んだミニ・アルバム『Folky Soul』を発表したが、それは彼らの活動自体にとっても転機であったという。

「やっぱりギターと歌というのは私たちのいちばん核としているものというか、あたりまえすぎていつも2人でやってることなので、これを出していいのかな(笑)、っていう気持ちは実は私たちの中であって……」(azumi、ヴォーカル)。

「でも、ギターと歌でやっているという根本を、今までwyolicaを知らない方にもわかっていただけたり、『Folky Soul』をきっかけに聴いてくださる方もいたので、良かったなぁって」(so-to、ギターほか)。

  そうした気持ちの切り替えが、アルバムの制作に良い影響を及ぼしたようだ。特に今作でのazumiのヴォーカルには、デビュー当時のいくつかの楽曲にあったシャカリキな歌い方に変わり、ナチュラルな唱法がグッと際立っている。その点についてはso-toが「歌を録るときに、『Folky Soul』と近い感じでっていうのは2人とも意識してたかもしれない」と言うと、azumiも「フラットにデモを録るときのような感じでも、これでいいんだな、っていういい意味での力の抜き加減がすごくわかった」と隣でうなずく。また、渡辺善太郎や福富幸宏、TSUCHIEといった多彩なプロデューサー陣の起用も的確かつ、曲のイメージをダイレクトに伝えているが、そうした部分でも現場のリラックスした雰囲気が影響を及ぼしているのだろう。そうした成果は、必然的にwyolicaの原点を再確認させ、向かい合うことにも繋がっている。

「普段はヒップホップとかR&Bばかり聴いているのですが、流行の音色とか、トラックばっかりを追うのではなく、かといって昔の音色をそのまま再現するのでもなくて。『fruits & roots』は、より根本的なところでソウルっぽさや、ヒップホップのサンプリングの元になっている音楽たちに近づけたかなって。めざすところは、日本語のソウルフルな音楽なんです」(so-to)。

 最後にタイトルの『fruits & roots』に込められた2人の思いを訊こう。

「今回のアルバム自体が〈fruits〉だとしたら、〈roots〉っていうのはこの2年間ライヴをやりながら感じてきた、自分たちの芯というか、聴いてくださるお客さんが目の前にいるっていうのを実感できた期間だったので、そういうところもあって『fruits & roots』としたんです」(so-to)。

▼wyolicaの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年11月13日 16:00

更新: 2003年11月13日 19:27

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/駒井 憲嗣