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インタビュー

レミオロメン


 小気味よい演奏力と、鮮烈な曲作り……。いま、もっとも期待されるバンド、レミオロメンの全貌が、いよいよあきらかになる。待ちに待ったファースト・フル・アルバムのタイトルは『朝顔』。

「アルバムのなかに“朝顔”という曲があって、シングルにしたいくらい気に入ってるんですね。自分たちの世界観、メンバー3人の関係……それがちゃんと表れている曲でもあるし。あと、〈花が咲いてる感じ〉というのはいいかなあと思ったんです。たとえ不安を経験したとしても、あきらめながら生きていきたくはないし、曲というものは最終的に〈希望〉で終わらせたいと思っているし」(藤巻亮太)。

「このアルバムには、ひとつの〈想い〉が詰まっている」とも藤巻(全ソングライティングを担当)は語る。それは、デビューをめざしてひたすら地元で精進していた、1年前の〈あのころ〉の気分であると。

「神社に集まって、ずっとバンドの練習だけをしていた、そんな特別な時間のなかで生まれた曲たちですからね。しかもそれを、とっ散らかった形では出したくなかった。出すなら全体にそんな温度のある、ひとつのアルバムにしたかったんです。ただ、そんな想いで統一されはしてるんですけど。その想いを色に例えると? いやあ、そういう例えとか考えたことなかったけど……」(藤巻)。

「こげ茶……じゃない? このアルバムを色に例えるのなら」(前田啓介)。

「えっ、こげ茶!? いきなり燃え尽きてる感じじゃん(笑)」(藤巻)。

 仲のいい3人も、たまには意見が合わないときもあるようで(笑)。でも、ある〈想い〉という縦軸は貫かれているが、曲のスタイルという横軸に関しては、とってもカラフルで聴きやすかったりもするアルバムなのだ。

「そうですね。広がりがあると思う。柔らかい部分はバナナくらい柔らかいし、硬いのは……ドリアンぐらい(笑)」(藤巻)。 

 作る前に思い描いていた理想には、近づくことができたのだろうか?

「3人とも、いろいろな音楽を聴いてるし、理想といえば、どの曲もいい曲だなあと思えるものだろうし……僕の場合、たとえばレニー・クラヴィッツとかがそうなんですけど、ふと想ったときにふたたびそこに戻って聴いてしまうような、そんなアルバムになってたらいいですね」(神宮司治)。

 もうひとつ、このアルバム(レミオロメンの音楽)には、どの曲にも共通する重要なことがある。それは、〈歌として伝わるところ〉に向かって完成度を上げていく、メンバー全員の飽くなき集中力だ。

「ひょっとしたら今って、バンドがポップなものとして受け入れられにくい時代かもしれないけど、でも、その土台が見えはじめてるんだと、このアルバムでしっかり示したかったし、そこに向かうための3人のエネルギーがいい感じに響いた、伝えられた曲たちなんじゃないかとは思ってます。ほかのことは何も考えず、ひたすらその想いでやっていた。それが楽曲たちに栄養を、そして、確かな味わいを与えたんだと思う」(前田)。

 さて、そんな彼らの進むべき場所とは?

「〈野望〉と言っちゃうとちょっと違うんですけど、せっかく曲を作ってるのだから、より多くの、僕たちに興味がない人たちにも聴いてもらいたいと思うし、その可能性を感じて、そのためにできることならいろいろやっていきたいな、とは思いはじめてます。チョイスすべき道、採り入れて消化する音楽は無限にあると思っているし、その間口をいまから広くすることも可能だと思うし……。でも、音楽をやっていくってことは、まず、自分たちのなかのセンサーをしっかりさせておかないといけないと思うんですよね。これが本当に良いのか悪いのか? それを決めるのは自分たちだから」(藤巻)。

 シーンが新たな地平へと向かうとき、必ずキーとなるアーティストが登場する。そしてそれらの人たちは、いままでにない名前を持つ。レミオロメン――どんなバンドにも似てないこの響き。それはすでに、新たな音楽の始まりでもある。

PROFILE

レミオロメン
山梨県出身。小・中・高と同級生だった藤巻亮太(ヴォーカル/ギター)、前田啓介(ベース)、神宮司治(ドラムス)の3人で2000年に結成、関東近郊でライヴ活動を開始する。その後、活動を下北沢中心に展開するようになったころから徐々に注目を集めるようになり、2003年3月にはファースト・ミニ・アルバム『フェスタ』を発表。確かなアンサンブルから繰り出されるグルーヴとキャッチーなメロディー、スウィートさと力強さを兼ね備えた歌声がすぐさま話題となり、続くシングル“雨上がり”も前作以上の反響を呼ぶ。8月のシングル“電話”でメジャー・デビュー。11月19日には、待望のファースト・フル・アルバム『朝顔』(浮雲/スピードスター)をリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年11月20日 12:00

更新: 2003年12月11日 18:28

ソース: 『bounce』 248号(2003/10/25)

文/小貫 信昭