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インタビュー

日之内エミ


 m-floの☆Taku Takahashiが主宰するTachytelicの第1弾アーティストとして登場した日之内絵美。デビューから1年で完成させた初のアルバム『Dramatiques』は、聴き飛ばされる曲がないように飽きのこない作品をめざしたという。

「サウンド的に飽きさせないものをやりたい、って最初から言ってまして。いろんな曲にチャレンジしたいし、サウンド的な面で遊びたいって(☆Takuに)伝えてました。全体を考えて作ったというより、結果的にこんなのが出来たという感じです。アルバム・タイトルも、いろんなドラマが1曲ごとにあるって意味でつけたんです」。

 まさに。最新シングル“Painful”にも、16歳の時にみずから制作しオーディションで歌ったという〈ドラマ〉がある。

「最初、周囲からは“Painful”でデビューするの?って期待されてたんですけど、私をいちばん表している曲でもあるんで、ここぞ!!という時に見せたかった(笑)」。

 小学生の頃から、マライア・キャリー、TLC、ボーイズIIメン、そしてローリン・ヒルなどを聴いてきた彼女は、いま、シングルでマイケル・ジャクソンの“Rock With You”をカヴァーするまでになった。実に真っ当なR&Bファンといった印象を受けるが、「メロディーをキチンと歌うところにR&Bの良さを感じた」と彼女。そして日本のアーティストで彼女の理想とする音を感じたのがm-floだった。

「邦楽なのに洋楽を聴いた時と同じ感動を初めて味わったというか……日本語と英語を巧みに使って高度なことをしながらそれを抵抗なく届けてるっていうのが、タダモノじゃないって思いました(笑)」。

 そしていま、そのサウンドメイカーである☆Takuと〈共同作業〉している彼女がここにいる。いわく「m-floのサウンドが大好きで聴いていた時期を思い出すと、いまの自分が信じられない」と。楽曲では、10代から20代になるまでの多感な時期の心情を切なくもポジティヴに描き上げ、ハード・エッジなR&Bサウンドをバックに愛くるしい力唱を披露しているが、彼女、印象的なメロディーを創造する才にも長けている。

「ピアノも弾けるんですけど、最近はデジタル・レコーダーを持ち歩いて、それに声を吹き込むのがメイン。☆Takuさんとの作業もリラックスした雰囲気で、私が考えてきたものを煮詰めていく感じですね」。

 なかでも特に強力な仕上がりなのが、最後に録音したというHI-Dとの共演曲“You said, You did”だ。

「アルバムの曲を見渡した時に、しっとりめのバラードが少ないと思いまして……ラッパーじゃなくヴォーカリストと共演したくて、HI-Dさんのイメージも考えながらメロディーを作ったので凄く楽しかったし、私は女でもやや高めのキーを取るので、それを抑えて低めにして、サビも同じ高さで歌えるぐらいに設定しました」。

 普段から☆Takuに参考になるCDなどを聴かせて、やりたい楽曲のイメージを伝えてきたという彼女。例えば、ディスコっぽい“hey boy...”はブラック・アイヴォリー“As If”のようなノリを意識したのだそうだ。もちろんR&Bだけでなく、彼女のアンテナは多方向に向いていて、最近は「抑えが利かない思いをガァーッと歌えそうな」激しいロックにもハマっているとか。そして今後は☆Taku以外とのコラボレートだって考えていきたいという。

「いい曲があれば歌いたいし、いろんな人と接したいと思いますね。☆Takuさんも〈いろいろ冒険してきなさい〉っていうタイプの人なので。それに制作のほうもやりたい。自分が作った曲を人に歌ってもらう機会がまたあれば嬉しいです」。

 新しい〈ドラマ〉はまだまだこれからも作られる。ストーリーを立体化させる歌声──日之内絵美の強力な武器だ。

PROFILE

日之内絵美
82年、大阪生まれ。4歳から14歳までを台湾で過ごし、そこでR&Bを中心にさまざまな音楽に親しんでいくなかでシンガーを志すようになる。帰国してからは作詞・作曲に取り組みはじめ、一方ではバンドのヴォーカリストとして地元大阪を中心にライヴ活動を展開していく。その後、m-floの☆Taku Takahashiが主催するオーディションで自作曲“Painful”を披露して合格。☆Takuのレーベル=Tachytelicの第1弾アーティストとして、2002年11月にシングル“Magic”でデビュー。その後も“Crying”“Freak!”“Painful”と着実にシングル・リリースを重ね、11月27日に待望のファースト・アルバム『Dramatiques』(Tachytelic/cutting edge)がリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年11月27日 17:00

ソース: 『bounce』 249号(2003/11/25)

文/林 剛