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インタビュー

Insolence


 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがまったくの別物に姿かたちを変え、リンプビズキットがハード・ロックに走ったいま、ごく一部を除けばラップ・メタルともミクスチャーとも呼ばれるシーンは衰退したかに見える。ただ、いつの時代も救世主は存在する。それが彼ら、2001年にマヴェリックから『Revolution』でメジャー・デビューを遂げた、北カリフォルニアはサンホゼ出身の超個性派ミクスチャー・ロック集団インソレンスである。ファースト・アルバムの衝撃冷めやらぬうちに行われた同年の初来日公演では、開演前からインソレンス・コールが沸き起こるくらい、彼らは求められていた。ひとつだけ意外だったのは、バンドが醸し出す空気がとてもピースフルだったこと。かつてボブ・マーリーは音楽で世界をユナイトすると唱えたが、彼らもまた同じ想いで音楽に取り組んでいる。

「ああ、もちろんさ。俺たちのヘヴィーな曲にネガティヴさは一切ないんだ。ポジティヴなヘヴィーさなんだよ。むしろヘヴィーな曲ほどポジティヴかもしれないね。俺たちはポジティヴなことをヘヴィーな音楽に乗っけて、自分たちの音楽を聴く連中のスピリットを刺激したいんだ」(ポール・ペリー:以下同)。

 新作『Stand Strong』のオープニングを飾る“Operation Irie”での、スクラッチを多用したグルーヴィーなサウンドと個性豊かなツイン・ヴォーカルとが織りなす世界は、刺激的でありながらもピースフルな空気に満ちている。そして、それはアルバム全体に一貫しており、サウンド的には前作でも見え隠れしていたレゲエ~ダブ色を一気に強めた感がある。

「自分たちが得意とするものを全面に出してるだけなんだ。俺たちの音楽背景はいままでと同じく、ヘヴィーなものからダブまで、あらゆるものをミクスチャーしたものなんだ。いままでと違うことをしてるつもりはないよ。ただ、ソングライターとして成長しただけさ」。

 楽曲を活かすも殺すもミュージシャン次第。メイン・ソングライターでもあるポールからすれば、ドラムの奨学金でサンホゼ国立大学に入るほどの腕を持つ新メンバー、ケヴィン・ヒグチの存在は頼もしいかぎり。それにインディー時代から20か国以上をツアーで回った経験に裏打ちされた自信もある。だから今回のアルバムを作るうえでも、良い曲を書くことだけに情熱を注いだ。

「このアルバムを作る前、俺たちは個人的にもバンドとしてもいろんな経験をしたから、書くことは山ほどあったね。俺たちは何かの〈ふり〉をしようなんて思わない。実体験をもとに曲を書くから、等身大の姿が映し出されるんだ。俺たちはこのバンドを始めて10年になるんだぜ。ロック・バントでラップをするのがトレンディーなものになる前から、俺たちはラップしていたんだ。俺たち以外でこういうことをやっていた唯一のバンドは、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンだね」。

 彼らがリスペクトするバッド・ブレインズやレイジがそうだったように、本作に収められた人間味溢れるメッセージからは志の高さが窺える。『Stand Strong』というアルバム・タイトルも、群雄割拠の時代を生き抜いてきた彼らのアティテュードそのものなのである。

「どんなに辛いことがあっても、背筋を伸ばして立ち続けろってことさ。自分を信じて、友人や家族を大切にして、自信を持って立て。そうすれば物事は良い方向に行くってことを伝えたかったんだ。俺たちの音楽がみんなに笑顔をもたらすことを願うよ」。

PROFILE

インソレンス
95年、カリフォルニアで結成。マーク・ハーマン(ヴォーカル)、メック・ワン(ヴォーカル)、マイク・ローワン(ギター)、ポール・ペリー(ベース)、ケヴィン・ヒグチ(ドラムス)、ジェリー・ダラロ(ターンテーブル)で構成される6人組のミクスチャー・ロック・バンドで、LAを拠点に活動をしながらこれまで4枚のアルバムを発表している。多様な音楽性を消化したトライバルなグルーヴが高い評価を受けており、バッド・ブレインズやサイプレス・ヒルなどとツアーを共にする。2001年発表の前作『Revolution』が好セールスを記録し、来日公演も大成功を収めた。このたび、ニュー・アルバム『Stand Strong』(Beatdown/ワーナー)の日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年11月27日 17:00

ソース: 『bounce』 249号(2003/11/25)

文/岡部 昭彦