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インタビュー

OJ&ST


 東北・青森と九州・佐賀。日本の北と南に住む互いの顔も知らない輩が、ほぼ同時期に共通の夢を抱き、〈ZEEBRA〉というひとりの男の下をめざして上京した。その輩の名はOJことOJ FLOWと、STことSENTENCE。97年、そのZEEBRAらを擁するUBGの門を叩いた2人は、以降、彼のサイドMCを主体に、数々のステージや客演を消化。5年という年月をかけ、一歩一歩、修練を積んできた。

「ジブさん(ZEEBRA)にいきなりサイドMCって言われたのが上京して3か月めくらい。最初はピロってばっかで、なかなかつかめなかった。一昨年のジブさんの全国ツアーの最終公演も、その前のステージがあんまり良くなかったもんで、(DJの)KEN-BOさんに〈お前ら、今度しくじったら後ろからレコード投げるぞ!〉って脅されたし(苦笑)。でも、そうやってやっていくうちにだんだんわかってきたし、ジブさんはエンターテイメントをすごく追求してるから、そういうところもホント勉強になりました」(OJ)。

「あと、俺がサイドMCで学べたのは精神力の強さ。全国のひとつひとつのステージ、すべてが試練でしたから」(ST)。

 けれど。サイドMCを懸命にやってるからといって、主役のスタイルをなぞってばかりじゃ、自分たちの個性は育まれない。そこで活きてくるのが客演仕事。結成当初の2人はフリースタイルを基本に、フロウを聴かせるタイプを多く作っていたそうだが、数々のコラボを経験した結果、楽曲のテーマを選ぶ着目力/咀嚼力/汎用力を高め、そのスタイルは「詞の内容を重視したグッとくるもの」(OJ)へと変わっていったという。そして、そんな鍛錬の成果をすべてぶち込んだのが、今回到着したデビュー・ミニ・アルバム『ONE LIFE』だ。収録された(イントロを除く)9曲には、彼らの〈俺らは5年間、こう思ってやってきました〉という気持ちが濃密に詰まっている。

「今回の作品のテーマは、地方出身者の俺らが東京でサヴァイヴしていくぞっていう気持ち。いろいろ悩んだ時期もあったんだけど、とにかく東京で2人で勝ち上がっていきたいっていう。特に事前にコンセプトを設けたわけじゃないんだけど、出来上がった曲を並べてみたら、自然とそういうものになってたんですよね」(OJ)。

 特にその気持ちが表れているのが、デカい夢を追う2人の数年後が思い描かれたリード曲“ONE LIFE”。D-Originu製のトラックはメロウかつソフトで、いい意味で、彼らにある〈ゴリゴリ/イケイケ〉な側面を裏切る、叙情系チューンとなっている。

「まあ、俺らにもメロウな部分はありますし、それに俺らにゴリゴリ/イケイケなイメージがあるのはわかるんですけど、実は逆の作戦をとったところもあるんスよ(笑)。ジブさんが言ってたんですけど、ノトーリアスBIGもさんざん客演やって、その後デビューするときに(メロウな)“Juicy”をカットしたじゃないですか。そういう意味では、俺らもそれにハマるね、なんつって。じゃあ“ONE LIFE”でいこうよってね」(OJ)。

 OJ&ST、彼らはかわいいんだけど兄貴にいじめられる末っ子みたいな感じだ。それは、UBGの諸先輩方に厳しいムチを与えられながらも、ちゃんと温かく育てられてきたから。その証拠に、ZEEBRAをはじめとするUBGの連中が、ひとつの作品にここまでこぞって参加するのは前例がないし、そんな本作からは縦社会特有の人間味に溢れた温かみもどこか感じ取れる。本作のイントロでZEEBRAは2人にこうエールを送る。〈今までは後輩/だがここからは同期〉〈ベストステージ見せな/ここからがネクストステージ〉。

 5年前にUBGの門を叩いた2人が、いまその門から晴れ晴れしい門出を飾った。

PROFILE

OJ&ST
佐賀出身のOJ FLOW(OJ)と、青森出身のSENTENCE(ST)によるMCデュオ。それぞれが97年にZEEBRAを中心としたクルー=UBGに同時期に加入し、98年にデュオを結成。同年のZEEBRAのツアーにサイドMCとして帯同するなど数々のライヴ経験を重ねる。2000年頃よりZEEBRAの“罠”やUZIの“戦場の狼”をはじめとして、客演レコーディングも経験していく。2003年もコンピ『SHOW and PROVE』に“G.Y.M”で参加、ZEEBRAの“男たちの挽歌”にも登場するなど注目を集める。このたび、D-Originuが全面プロデュースし、UBGのクルーがバックアップしたファースト・ミニ・アルバム『ONE LIFE』(FUTURE SHOCK/ポニーキャニオン)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年12月18日 16:00

更新: 2003年12月18日 17:45

ソース: 『bounce』 249号(2003/11/25)

文/猪又 孝