インタビュー

Ryan Adams

やむなくダブル・タイトルの新作をリリースする、ライアン・アダムスの枯れ果てない才能


「脅かすわけじゃないけど、これは本当に楽しいレコードだと思う。おかしな曲がたくさんあるんだ」。

〈器用貧乏〉なんて言葉があるけれど、ライアン・アダムスはどうなんだろう。95年にウィルコやジェイホークスと並ぶ期待のネオ・カントリー・バンド、ウィスキータウンでデビュー。やがて『Heartbreaker』でソロ・デビューを果たし、セカンド・アルバム『Gold』では収録曲“New York, New York”がグラミー賞候補に挙がるなど、言うことナシの出世コースを歩んできた。ところが、ここにきてその溢れる創作力が思わぬ混乱を巻き起こしている。ピンク・ハーツ、フィンガーという2つのサイド・ユニットを始動させたライアン。しかも、新作までも2タイトル同時にリリース!というやりたい放題。冒頭の発言はそのうちの1枚、『Rock N Roll』に対してのものである。

 ゲストにグリーン・デイのビリー・ジョーを迎えた本作は、「車で爆音でかけてもらうために作られたんだ。完璧にデュラン・デュランな瞬間もある」と本人も語るように、これまでになくラウド。背筋がシャキっと伸びた内容で、タイトルに偽りなしのギター・サウンドがカッコいい。ところが同時リリースの『Love Is Hell Part.1』のほうは、UK的な憂いを滲ませたセンシティヴな逸品(オアシス“Wonderwall”のカヴァーあり!)。元々こっちが先に制作されていたのだが、レーベルとの意見の食い違いで、ミニ・アルバムという形で発表されることになったとか。そんな新作2タイトルはまさに太陽と月の関係。こんなふうに無造作に複数の作品を同時リリースしてしまうライアンは、やはり器用とはいえないかもしれない。でも才能の豊かさだけは保証付きの、憎らしいほど無邪気なロックンローラーなのである。

▼ライアン・アダムスの関連盤を紹介。

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掲載: 2003年12月18日 17:00

更新: 2003年12月18日 17:44

ソース: 『bounce』 249号(2003/11/25)

文/村尾 泰郎