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インタビュー

Sugababes


 ここ日本において、シュガーベイブスへの評価は低すぎる!と、僕は事あるごとに、あたり構わず憤慨してきた。彼女たちは本物である!と。R&Bを基本とした芯の強さを窺わせるクールなコーラス、ソリッドかつポップにキマるUK特有のガラージ・サウンド。彼女たちの人気はいまやUK、いや欧州各国においては、ブルーと並ぶほどの凄まじさがある。デビューからたった3年で〈ブリット・アワード〉〈Q・アワード〉〈スマッシュ・ヒッツ・アワード〉など権威のある賞を次々と獲得し、ガールズ・グループの最新型ともいえるその強烈なスタイルで、世界中の注目を集める存在となった。しかし、意外にも彼女たちはクールにこの現状を受け止めているご様子。

「周囲に、君たちこういう賞を受賞したね!とか言われても、みんなに言われるまで意識していない感じなの。まあ、素晴らしいことなんだけど」(キーシャ・ブキャナン)。

 そして話題となったあのグラストンベリー・フェスティヴァルの最終日、メイン・ステージで披露したあのパワフルなパフォーマンスはまだ記憶に新しい。彼女たちはレディオヘッド、R.E.M.、メイシー・グレイらと肩を並
べ、ガールズ・グループとしては初の快挙を成し遂げた。

「ポップ・グループがグラストンベリーに参加してくれって依頼されるなんておかしい!って、多くの人が思ったでしょうね。でもバックステージで他のバンドのみんなが私たちに話しかけてきてくれてね、凄くうまくいったの。いままでやったギグのなかでもたぶん最高のものだったと思うわ!」(ハイディ・レンジ)。

 そんな彼女たちの最新アルバムとなる『Three』。これがまた素晴らしいのである! ピンク、クリスティーナ・アギレラ作品などのプロデュースで現在のポップ・シーンを象徴するプロデューサー、リンダ・ペリーやビョーク作品でお馴染みのガイ・シグワースなど、名だたるプロデューサー勢が参加。彼女たちの旨みを余すことなく引き出すことに成功している。なかでも度肝を抜かれたのが、セリーヌ・ディオン、ブランディ、グロリア・エステファンからエアロスミスまで幅広いアーティストへの楽曲提供で知られる大作曲家、ダイアン・ウォーレンが名を連ねていることだ。彼女が提供した“Too Lost In You”は10代の頃にありがちな、〈ご飯も喉を通らない!〉というような苦しくて切ない恋心を、等身大の言葉で歌い上げた至高のバラードである。

「私たちはアメリカにいて、リンダ・ペリーと一緒に曲を書いてたわ。それでダイアンが、私たちがアメリカにいることに気付いたの。一緒に仕事がしたいって、私たちのために演奏してくれた。それを聴いた途端、みんなが気に入っちゃったのよ」(キーシャ)。

 先行シングルとしてすでにUKチャート初登場1位を獲得した“Hole In The Head”は、R&Bとエレクトロニカが絶妙に融合した快心のクラブ・ヒット・ナンバー。3人の個性がさらに際立ち、その他大勢のガールズ・グループとはあきらかに異なる独自の音楽性を打ち出している。

「私たちのヴォーカルがシュガーベイブスを作っていると信じてるわ。誰かが私たちの音楽をやっても、私たちと同じようには聞こえないはずよ。私たちと同じようにやっても、私たちにはなれないもの。私たちはポップ・ミュージックそのものだからね」(ムティア・ブエナ)。

〈ポップ・ミュージックそのもの〉──この言葉以上に、彼女たちを説明する言葉を僕は知らない。今作で彼女たちが世界中をふたたび騒がす存在になる、という確信は揺ぎないものとなった。どうやら、僕が憤慨する必要ももうなくなりそうである。

PROFILE

シュガーベイブス
クラブ・ミュージックやR&Bを聴いて多感な時期を過ごしたキーシャ・ブキャナンとムティア・ブエナらによって結成されたイギリスのガールズ・グループ。2000年のデビュー・シングル“Overload”は全英チャート6位を記録、同年リリースのファースト・アルバム『One Touch』も高い評価を得るなど順風満帆なスタートを切る。その後、ハイディ・レンジが加入し、2002年にはセカンド・アルバム『Angels With Dirty Faces』を発表。〈ブリット・アワード〉受賞や〈グラストンベリー・フェスティヴァル〉出演を果たすなど、あらゆる層から支持を集めている。2003年10月にはサード・アルバム『Three』(Island/ユニバーサル)を発表し、このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年12月25日 11:00

更新: 2004年01月29日 18:48

ソース: 『bounce』 250号(2003/12/25)

文/冨田 明宏