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インタビュー

Joss Stone


 イギリス生まれの16歳の白人少女が、ベティ・ライトをはじめとする70年代マイアミ・ソウルの大御所たちのバックアップを受けてアルバムを作った──それだけでも驚きなのに、その歌いっぷりは16歳とは思えないほど堂々としていて、情感豊か。しかもバックの音は、ほぼオール生演奏というこだわりよう。歌を習ったこともバンド活動をしたこともなく、「ただ歌うのが好き」で、13歳の時、TVのオーディション番組に「軽い気持ちで」出演して歌手になった……と言うわりには、かなりの本格志向だ。ジョス・ストーンとは、いったいどんな娘なのか。

「両親が音楽好きだったから、ジャムとかクラッシュ、メリッサ・エスリッジ、アニタ・ベイカー、トレイシー・チャップマンとか、あらゆるものを聴いていたわ。そのなかで私はソウルが好きになったの。たぶんヴォーカルに惹かれたんだと思う。いちばん影響されたのはアレサ・フランクリン。あとはローリン・ヒルかな? そういうのばかり聴いていたから、それが自然に声に表れているのね」。

 タイトルは直球で『The Soul Sessions』。リトル・ビーヴァー、ティミー・トーマス、ラティモアらのマイアミ勢とNYのミュージシャンが奏でるグルーヴィーな音をバックに、古いソウル/R&Bをカヴァーしている。

「アイデアそのものは(所属レーベルであるS・カーヴの)スティーヴ・グリーンバーグのものだった。ただ、オールド・スクールっぽいソウル・アルバムは以前から作りたいと思っていたのよ。アレサとかアル・グリーン、ジェイムズ・ブラウンを聴いて育ってきた私としては、〈どうして今、彼らのような作品を誰も作らないのかしら?〉って思っていたから。そういう音楽を今の時代に再現したかったの」。

 カヴァーしているのは、敬愛するアレサをはじめ、カーラ・トーマス、ローラ・リー、アイズレー・ブラザーズ、それにシュガー・ビリーなんてところまで。本人のチョイスにしてはヤケにシブすぎるが……。

「実は数曲しか知らなかったの。スティーヴと仕事をしはじめて、いろいろな曲を聴いたわ。そのなかから共感できるものだけを選んでいった。だってソウル・ミュージックだもの。ただ歌うだけじゃダメ。ポップスとは違って、〈こんなこと私には起こりえないわ〉なんて思いながら歌うことはできない。あと、好きな曲でも、その曲を自分なりの解釈で歌えるかどうか、というのも課題だった」。

 しかし、当初は今回のような〈ソウル・セッション〉のアルバムを作るというプランはなかったそうで、それ以前にカヴァー集ではないオリジナル・アルバムを作っていたのだとか。そこでいっしょに仕事をしたひとりがルーツのクエストラヴで、その繋がりから、今作には彼が制作したフィリー録音のナンバーも1曲収録。ちなみにその“Fell In Love With A Boy”(ホワイト・ストライプスのカヴァー)にはアンジー・ストーンもバック・コーラスで参加している。

「クエストラヴはすごくクールでいい人よ。いままでフィリーから出てきたものはすべて気に入っている。アンジー・ストーンはベティ・ライトの友達だったの。彼女の『Mahogany Soul』が好きで、何度も繰り返し聴いていたわ。今後は彼女みたいな作品を作っていきたい」。

 と言いつつ、すでにニュー・アルバムの制作にも取り掛かっているそうで、ローリン・ヒルとインディア・アリーを混ぜ合わせたような感じにしたいと意気込んでいる。

「次のアルバムはコンテンポラリーな作品にするつもり。昔の要素も入れてソウルっぽいんだけど、ヒップホップっぽい感じもあるの。レゲエ・トラックもバラードもあるし、いろんなもののミクスチャーになるはずよ」。

 この後、エリカ・バドゥのツアーのサポートをするかもしれないというジョス嬢。「いいチャンスがやってきたら逃さないようにするわ!」という発言のごとくタフな彼女のヴォーカルは、どんな音でもペロリと呑み込んでいきそうだ。

PROFILE

ジョス・ストーン
87年、イギリスのドーバー生まれ。幼い頃よりアレサ・フランクリンやホイットニー・ヒューストンらの曲に親しむ。2001年、14歳の時にBBC放映のタレント・ショウ〈Star For A Night〉のオーディションで優勝。その後、チャリティー・ショウで歌った際の映像をきっかけに、NYのS・カーヴと契約。2003年、ベティ・ライトらとアルバム制作に入るが、レコーディングで披露したカーラ・トーマスのカヴァーを契機にソウル・カヴァー作品へと方向転換。〈ジャニス・ジョプリンの再来〉とも評される歌声をマイアミ・ソウルの重要人脈がバックアップしたデビュー・アルバム『The Soul Sessions』(S-Curve/Virgin/東芝EMI)の日本盤が、2004年1月16日にリリースされる予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年01月22日 18:00

ソース: 『bounce』 250号(2003/12/25)

文/林 剛

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