インタビュー

安藤裕子

独自のバランス感覚で紡がれた表情豊かなメロディーが、いま光を放つ!


  閃きをそのまま音像化したかのようなメロディーと言葉は、どこかCharaを思わせるようにキワキワのバランス感覚のなかでポップに輝き、その歌声は多彩な役柄を演じる性格派女優のように表情豊か。プレイ・ボタンを何回押しても、安藤裕子の音楽は新鮮なままだ。

「以前に比べれば段違いに普通の構成で曲を作ってるんですけどね(笑)。以前はFメロぐらいまでありましたから。音楽的なボキャブラリーの薄さは自慢できるぐらいなんですけど、逆に最近は知らないから強い部分っていうのがあるかな?と思ってます」。

 ファンタスティック・プラスティック・マシーンの楽曲も共作している作曲家、宮川弾が提供したキュートなポップス調から、BAZRAが演奏に参加した相当ごついロック調まで。『サリー』に続くセカンド・ミニ・アルバム『and do, record.』においても、その独特の世界観への入り口をさらに広く設定しながら、安藤裕子の多面性はまだまだ奥深い。とにかくひっかかったら最後だ。

「字余りっぽいところはわざとでもあって。ちょっとヘンな感じに歌わないと自分がダメなんですよ。メロディーと歌詞のぶつけ方で自分がひっかかる音をどうしても入れたい。あと、人に〈歌詞聴きとれない〉って言われるの結構好きなんですよ。違った解釈してもらうほうが好きです。私が歌で言いたいこと言ってても、別にそう聴こえなくていい」。

 クールな発言に聞こえるかもしれないが、女性シンガー・ソングライターとしてフラットすぎる視座こそ彼女の武器かも。もともと映画製作の道を志していた背景にも関係しているのか、最近のお気に入りだというダミアン・ライス『O』に関する言葉はそれを表す。

「不思議なんですけど、これを聴いてると情景が映画のワンシーンみたいな感じで全部自分のなかに見えてくる」。

『and do, record.』を聴けば、その言葉は安藤裕子の音楽にもあてはまることに気付くはずだ。

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掲載: 2004年02月19日 12:00

更新: 2004年02月19日 18:48

ソース: 『bounce』 250号(2003/12/25)

文/内田 暁男