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インタビュー

土岐麻子

Cymbalsを経てソロ活動開始、デビュー盤はジャズ・アルバム!


このページをご覧のみなさんには今更あらためて説明する必要もなさそうな気がするのだが、去る1月20日、渋谷O-Eastでのライヴ〈encore〉をもってCymbalsが解散した。90年代を集約したような多角的戦略と類い稀なるポップ・センスをもって6年半という歳月を駆け足で過ぎ去っていったCymbalsのヴォーカリストだった土岐麻子が2月25日、早くもソロ・デビュー・アルバム『STANDARDS』をリリースする。本作はジャズのスタンダード・ナンバーのカヴァー曲をメインに揃え、それ以外にもアース・ウインド&ファイアー“September”、ティアーズ・フォー・フィアーズ“Everybody Wants To Rule The World”という2曲のジャズ/ボサノヴァ調アレンジ曲が加えられた計6曲収録のカヴァー・アルバムとなっている。おそらく、多くのCymbalsファンが思っているのは「情報過多な〈ポップス〉をやっていたCymbalsのヴォーカリストが何故ジャズのカヴァーを?」という部分だろう。

「父親がジャズ・ミュージシャンなので、元々ジャズは好きだったんです。それで、本当はオリジナル曲でデビューしようと考えていたんですけど、いろいろ考えるうちに、楽曲の新しさだったり面白さという部分よりも、ヴォーカリストとしての自分を出してみたい、と思うようになって。それだったら前からやってみたかった父親と一緒にやってみようかな、と」。

ミュージシャンとしてのソロ活動を始める前に、〈ヴォーカリストとして〉のデビューを選んだというだけあって、本作では彼女の父親である土岐英史をはじめとするヴェテランの演奏に支えられ、これまでとは一味違った表情豊かなヴォーカルを味わうことができる。“My Favorite Things”、“The Good Life”などのスロウな曲ではふくらみと伸びの豊かさを感じさせつつ、一転したアップ曲“Feelin Good”では安定したバンドの演奏に流されることなく凛とした佇まいを見せている。

「ヴォーカルを聴かせたいという気持ちで作ったアルバムだったので、選曲やタイトルに深い意味を持たせたくなかったんです。だから、できるだけ沢山の人が知っているような選曲をしました。聴いた人に、タイトルは知らなくても〈あ、この曲知ってる〉って言ってもらいたかったんです。Cymbalsの時は、曲にいかにメッセージを含ませるのか、という部分に重みを置いて活動していたんですけど、このアルバムはまた違っていて、しっかり聴くこともできるんだけど、あまり主張しないというか、肩に力を入れずに聴ける内容になっていると思います」。

確かに、このアルバムは畠山美由紀やアン・サリーらにも通じる有機的な手触りを感じさせつつも、彼女の奥深くに根付いた〈ポップさ〉がそこかしこから表出しているアルバムである。また、「これまではほぼ同じメンバーと音楽をやってきたんですけど、今回みなさんと始めて一緒にやってみて、やっぱり性格と一緒で人が変わるとプレイも変わるんだな(笑)、ということが実感できたのは収穫でした」と笑顔で語る彼女の表情からは、この試みを心底楽しんでいるのが伝わってくるようだ。がしかし、彼女は本作をもって〈ジャズ・シンガー土岐麻子〉へと転向するつもりは全くないのだそう。

  「これはどうしても言っておきたかったんですけど(笑)、Cymbalsが終わってジャズ・ヴォーカリストとして再デビュー、みたいな捉えられ方は違うんですよ。ソロ活動はまた別にやりたいことが私の中にはあるので、これは課外活動みたいなものなんです(笑)。今後のソロ活動では、自分なりの世界を作っていけるかという不安もあるんですけど、バンド時代にはできなかったいろんなことをやってみようという楽しみもありますね」。

文字どおり自らの〈ルーツ〉をジャズに見つけた彼女が、一つの区切りを経て、虚脱や混乱に巻き込まれることなく改めて自分自身を見つめ直したと言えるであろう今作。「元Cymbalsの~」というエクスキューズ抜きにして聴かれるべき作品なのではないだろうか?

『Standards ~土岐麻子jazzを歌う~』
1. My Favorite Thing (試聴する
2. September (試聴する
3. The Good Life
4. Everybody wants to rule the world
5. Feelin' Good
6. Like Someone In Love

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2004年02月19日 12:00

更新: 2004年02月26日 17:32

文/ヤング係長