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インタビュー

AMIEL


 大御所から新人まで色とりどり、まさに〈百花繚乱〉そのものだった2003年の女性ヴォーカル・シーン。そして2004年、その勢いそのままにオーストラリアから超新星が飛来した! アミエルという24歳の若き才能。これはズバリ事件ですよ!!

「まず、アルバムをリリースできたことにホッとしてる。一切の妥協もないし内容に関してはベスト!! 満足してるわ」。

 そう語る彼女のデビュー・アルバム『Audio Out』なのだが、これが尋常じゃないほど素晴らしい。ビートルズにプリンス、ミッシー・エリオットやエイフェックス・ツインにまで至るその影響を消化したサウンドは、ロックからヒップホップ、ハウスにエレクトロニカまでと、とにかく変幻自在。そして繊細かつ力強い彼女の歌声は、それらすべてを〈ポップ・ミュージック〉に結びつける。これはハッキリ言って、フィメール・ポップの新たな基準点であると早くも断言したくなる充実ぶり!

「カテゴリーを限らない、その枠に収まらない奇抜なものに惹かれるの。新しいものを組み合わせることで、新鮮なものが生まれる。このアルバムも、誰かがどう思うかより自分が聴いておもしろいものを作る、ってことが大きなテーマになってたわね」。

 9歳から曲作りを始め、11歳で作った曲が本国の大先輩オリヴィア・ニュートンジョンの目に止まるという早熟なエピソードを持つアミエル。今回のアルバムでも、映画「ムーラン・ルージュ」の音楽プロデューサーであり、彼女がもっとも信頼を寄せるというジョシュ・エイブラハムズを筆頭に、アヴリル・ラヴィーンらを手掛ける売れっ子チーム、マトリックスなど、彼女の才能に正比例した豪華なメンツが脇を固める。しかし、そんななかでも「自分のやり方というものを大切にしたい」と、落合博満ばりの〈オレ流〉を貫くアミエル嬢。サウンドもメロディーも歌詞も一切の妥協は見当たりませんが、それは自身の性格からきてるんですかね?

「そう、完璧主義ね。あとは新しい経験に対して好奇心が旺盛。これは私の長所だと思ってる。短所? いまの倍の時間がかかってしまうわよ(笑)。まあデビューしたばっかりだし、これ以上はあまり言わないでおくわ(笑)」。

 このアルバムで印象深いのは、恋愛に限らず自分が興味を持ったさまざまな事象を語る巧みな話術。この取材時においてもそうだったが、彼女は自分の〈意志〉であったり〈言葉〉を非常に大事にしている。それが詞やメロディー、そして音楽となっていくのだ。

「歌詞とメロディーの繋がりっていうのは譲れないところね。歌詞も自分の声も楽器といっしょで、すべてが喧嘩しないように、調和することを大切にしたい。私にとって音楽とは、性格の一部だと思う。それはクリエイティヴに生きることであり、クリエイティヴなものを作ることでもある。そうすることによって、少しでも世界がポジティヴに変わっていけばいい、と考えているの」。

 次回作に向けて常に曲は書いているとのことだが、とりあえずいまは『Audio Out』という比類なきポップ・アルバムを体感してほしい。驚きや発見はもちろん、誰にとっても身近なポップ・ミュージック本来の姿を感じることができるはずだ。

「私が考える〈理想のポップ・ミュージック〉とは、国籍や宗教、性別とあらゆる壁を越えて共感でき、みんながいっしょに歌えるようなメロディーがあるものだと思う。みんなもこのアルバムを聴いて、そう感じてくれればいいな!」。

PROFILE

アミエル
79年、NY生まれ。音楽一家に育ち、幼少時に現在の活動の拠点となるオーストラリアへ移住する。そのころに手掛けた森林破壊をテーマにした曲が、オリヴィア・ニュートンジョンの耳に留まったというエピソードも。16歳でジョシュ・エイブラハムズのプロジェクトに参加し、“Addicted To Base”をレコーディングする。のちにピュアトーンズ名義で発表されたこの楽曲は、2002年までに豪・英・米のシングル・チャートを席巻するロングラン・ヒットを記録している。その間にも彼女はジョシュと共同でニュー・アルバムの準備を開始、2003年には先行シングル“Lovesong”を発表している。このたびデビュー・アルバム『Audio Out』(Mushroom/ソニー)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年02月26日 13:00

更新: 2004年02月26日 17:32

ソース: 『bounce』 251号(2004/2/25)

文/加賀 龍一