インタビュー

Nick Cannon


 「ウィル・スミスは憧れの人だよ。だから〈ネクスト・ウィル・スミス〉なんて言わるのは、僕にとってはとても名誉なことなんだ」。

 そう語るのは、全米で人気急上昇中のエンターテイナー、ニック・キャノン。全米TVネットワーク〈ニケロディオン〉の人気コメディー番組「The Nick Cannon Show」のホスト兼プロデューサーを務め、映画「ドラムライン」や「Love Don't Cost A Thing」にも主演するなど、いまやウィル・スミスに続くブラック・エンターテインメント界の若きホープである。「小さい頃からとにかく人を楽しませることが大好きで、みんなに笑顔になってもらうのが僕の喜びでもあったんだ」という彼は、16歳のときにスタンダップ・コメディーを始め、そのステージがきっかけで業界入り。TV界で順調に活動の幅を拡げ、いまの地位を築いていくが、その一方では「常にラッパーになることを考えてたんだ。いつかアルバムを出してやるってね」と、ラッパー・デビューの夢も片時も忘れずに持っていたそうだ。8歳の頃からラップを始め、14歳の頃には地元サンディエゴの仲間とダ・ボム・スクワッドというグループを結成して自主制作CDを3,000枚も手売り販売し、ウィル・スミスやアウトキャストのオープニング・アクトも務めたこともあるそう。これだけのキャリアがあれば、そのような夢を抱くのも当然のことだろう。そしてついに念願かなってファースト・アルバム『Nick Cannon』をリリースしたわけだが、「アルバムが出るなんて、最高の気分さ! 8歳の頃からずっとやりたいと思ってたことが実現したんだからね。いままででいちばん嬉しいよ!」と、無邪気に大喜びするニック。みんなを笑顔にしてきた少年も、やっぱり自分の夢が現実となった時には、いちばんの笑顔を見せるようだ。

「どんな人にでも聴ける、楽しいアルバムにしたかったんだ」という今作には、R・ケリーやジョー、B2K、ニヴェア、ビズ・マーキーなどなど、ここには書ききれないくらいの豪華プロデューサー/ゲストが顔を揃えている。なかでもジャスト・ブレイズの参加は意外でもあったが、「彼とは音楽を始める前からの付き合いなんだ。だから自然にいい曲が出来たんだろうな」とのこと。そのジャスト・ブレイズが手掛けた“Get Crunk Shorty”はイン・ヤン・トゥインズとファットマン・スクープをフィーチャーした超アゲアゲなナンバーとなっているが、一方でシンガーをフィーチャーした非常にメロディアスなトラックも多い。

「いろんなものを採り入れたアルバムにしたかったから、ヒップホップも入れたし、R&Bも入れたんだ」とその理由を語るニックだが、とりわけP・ディディとメアリーJ・ブライジの組み合わせがここでも堪能できる“Whenever You Need Me”は「あの曲はクールだね。いちばん印象に残るコラボレイションになったよ」と本人もいたくお気に入りのようだ。

 他にもDJジャジー・ジェフ&フレッシュ・プリンス“Parents Just Don't Understand”からヒントを得たと思しき“Your Pops Don't Like Me(I Really Don't Like This Dude)”や、ニックが育てているというティム・テリーなる男性シンガーをフィーチャーした“My Rib”など、若さと勢い溢れるフレッシュな曲が満載。

「クールに振る舞ったり、サグを気取ったりしないで、ありのままに自然体でやってるところが僕のラッパーとしての魅力かな」と語る彼は、映画「Underclassman」やあの「Shall we ダンス?」のリメイク版への出演も決まっており、今後も多忙な毎日が続くそう。次はスクリーンでニックに出会うことになりそうだが、それまでまずはこの華々しいデビュー・アルバムを堪能することにしましょうか。

PROFILE

ニック・キャノン
80年、カリフォルニア州サンディエゴに生まれる。DJジャジー・ジェフ&フレッシュ・プリンスに憧れてラップを志し、ティーンの頃にはダ・ボム・スクワッドなるグループで活動していた。その後、LAに移ってスタンダップ・コメディアンとしての活動を始め、看板番組「The Nick Cannon Show」で幅広い人気を獲得する。2002年にジャイヴと契約。同年に全米公開された初主演映画「ドラムライン」で一気にブレイクを果たし、そのサントラに“I'm Scared Of You”を提供。2003年、R・ケリーと共演した“Gigolo”がスマッシュ・ヒットを記録。同年末にリリースされたファースト・アルバムの日本盤『Nick Cannon』(Jive/BMGファンハウス)がこのたびリリースされたばかり。

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掲載: 2004年03月11日 12:00

更新: 2004年03月11日 18:52

ソース: 『bounce』 251号(2004/2/25)

文/川口 真紀