インタビュー

ニーハオ!

ジャージを着た三女戦士(ギャルバン)〈ニーハオ!〉参上


ニーハオ!:左から青ジャージゆかり(ベース、ヴォーカル)、赤ジャージれお(ドラム、ヴォーカル)、緑ジャージありこ(ベース、ヴォーカル)

  赤・青・緑のおそろい三本線ジャージ×サンバイザーをユニフォームに、関西の音楽シーンをお騒がせしている女の子三人組〈ニーハオ!〉。彼女たちのス テージを初めて観たときは、正直ずっこけた。

 のっけから、ブンブン唸りまくるツイン・ベース。ハンマー・ビートを繰り出すドラム。中間がスコーンと抜け落ちた変則・重低音にのせてご機嫌にハミングしていたかと思いきや、いきなりキャーッ!と集団ヒステリー。でもって一転、笑顔で「ニーハオ!」って……。いったい何なんですか、アンタらは!?

 「もともと三人はロックコミューン(くるりやキセルが在籍していた立命館大の名物サークル)の先輩後輩で、一緒にやりたい人がたまたまこの楽器しか弾けなかったっていうだけで、編成も特にこだわりはなかったんですよ。よくバンド組む時って、あの人のギターのプレイが好きやから、とかで声かけたりするじゃ ないですか? でもニーハオ!に関してはそれは全くなくて」(ゆかり)

「一緒にいたらおもしろいやろ、みたいな」(れお)

「で、最初はこの編成だったん で、〈怖-coa-〉(姫路のG.+Dr.による女性ノイズユニット)とか、音数の詰まった轟音のイメージもあったんですよ。でも、いざやるとできない。ヘタクソなんもあるけど、たぶん自分の中にあるリズムとかメロディが違ったんですよ。で、自然にやったら今みたいなスカスカな……(笑)」(ゆかり)

  そんな無意識の産物とはいえ、ニーハオ!の音楽は〈ローファイ〉で片付けるには、あまりにフッ切れている。オートマ免許取り立てでいきなりミッション車を運転したような、大胆なギア・チェンジが生み出すダイナミズム。生まれたばかりの直感や閃きが、そのまま実態を持ったような……。相当フリーキーなのに、とんでもなくポップでキュートで。これぞギャルバン! と同性からみても、思わず羨ましくなるほど(マジ)。

 オルタナ女子3人組……ということで、ついスリッツやレインコーツが思い浮かんだりもするが、当の本人らは「全然聴いたことなくて、みんなに似てるとか 言われて、何じゃそれ?って」(ありこ)と至ってあっけらかん。

  「だから、おもしろいですよ。私なんかは、ルーツを踏まずにいきなりリミテッド(ゆかりが別に参加しているLimited Express(has gone?)。03年、ジョン・ゾーンのレーベルからアルバムをリリース)みたいなバンドやって、今ごろ初めてラモーンズかっこいい!とかなってて……。ただ、なにも知らないけどやってるのよーっていうのはカッコ悪いし、日々努力はしてます。天然でやってるんじゃないよ、がんばってるよーって」(ゆかり)

 衣装のジャージはダテにあらず。意外にスポ根な一面が、また何とも爽快だ。

 「ジャージに関しては多少、後悔はしてるんですけどね、今さら脱げない(笑)」(ゆかり)

「でもジャージがあるからココまでやり切れる感じはあって。 着たらニーハオやるぜ! みたいな」(れお)

「男のネクタイみたいに、戦闘服的な。チャックをジャッと上げて……ね」(ありこ)

  初の正式音源となる『RED』は、そんな彼女らの瞬発力あふれる部室トーク(笑)がそのまま真空パックされた好盤。福岡の盟友、folk enoughの井上周一をプロデューサーに迎え、主に彼らのホームスタジオにてレコーディングを決行。イルリメ、二階堂和美、ラブクライのNANAなど、ジャンルを超えたユニークな面々がラップなどで参加しているのも注目だ。

 夏には早くも第二弾『BLUE』をリリース予定。まだまだ未知数な人たちだけに、当分、目が離せません。

ニーハオ!『RED』
1. カッカドゥードゥルドゥー(試聴する
2. ロマンチック・スクラッチ
3. NECESSARY(試聴する
4. ワイパー feat. illreme
5. キャンディ
6. I ♥ Smurfy (dance remix)
7. たーたたたーた cluping vir.

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2004年04月15日 14:00

更新: 2004年04月15日 19:20

文/井口 啓子