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インタビュー

MC SNIPER

俺の声が聞こえるかい?──ってな感じで、韓国より注目のラッパーが登場したぞ!!


 先日リリースされた坂本龍一の新作『CHASM』のリード・トラック“undercooled”でフィーチャーされたことで、日本でも話題となったMCスナイパー。彼がこれまでにリリースしてきた2枚のアルバムは本国・韓国で好調なセールスを記録したものの、どちらのジャケットにも〈19歳未満禁止〉のロゴがプリントされている。韓国の音楽業界に対する意義申し立てがあれば堕胎をテーマにしたものもあるそのリリックを聴けば、本国で彼がどのような立ち位置にあるかは理解できるだろう。

「たぶん僕のメッセージの強烈さというのは、スラングというか言葉使いの部分からきてるんだと思う。でも、僕の場合はそういう言葉使いじゃないときちんと表現できないんだ。使いたいから使う、というのは自分の権利だから誰にも介入されたくない。けっこうあちこちから圧力はあったけどね(笑)」。

 彼は蓮華紋様をみずからのトレードマークにしているのだが、「泥のなかでも自分の色を失わない蓮華を見て自分も見習おうと思った」というその理由を聞けば、彼の〈折れないスピリット〉の一端を知ることができるだろう。そして、そんな彼の基本姿勢はこのたび日本盤としてもリリースされたデビュー作『So Sniper...』、そして最新作『First Trip』を聴けば、さらに強く納得できるはずだ。特に韓国の伝統楽器をデビュー作以上にフィーチャーし、韓国人である自身に向かい合ったその新作は強烈な仕上がりである。

「僕はいつも韓国人であることを忘れないようにしている。韓国人であることを恥ずかしく思うこともあるけど、韓国人として生まれた以上はそのプライドを捨てたくないんだ。とはいえ、これからは国境とか皮膚の色とか言語を超えてひとつになるべきだと思う。そもそも音楽は国境を超えたものだとは思うんだけど」。

 そう話した後に「僕も韓国でまだまだがんばるよ。よろしくお願いします(笑)」と続ける彼。〈地に足を付けたアーティスト〉とは彼のようなヤツのことを指すのだろう、と強く思う。最後に、彼がヒップホップを通じて伝えたいことを訊いてみた。

「社会的な問題はいろいろあるけれど、そのなかで僕の〈声〉を伝えたい。頭じゃなくて心で聴ける音楽を作りたいんだ」。

 ちなみに、取材時にこっそりと聴かせくれた新曲はデューク・エリントンをサンプリングしたユニークなものだった。今後の彼の活動も本当に楽しみだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年04月22日 12:00

更新: 2004年04月22日 18:30

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/大石 始