The Zutons
ビートルズを生んだロックの聖地、リヴァプール。21世紀を迎えた矢先、コーラルによって復権を果たしたこの都市に新たな突風が襲来した! コーラルと同じレーベル、デルタソニックに所属のズートンズ。人呼んで〈暗黒サウンド墓掘りバンド〉! いまだ秘密のヴェールに包まれた彼らが、デビュー・アルバム『Who Killed......The Zutons?』を完成させた。
「いや~、べつに〈こういうサウンドにしよう〉っていう明確なヴィジョンはなかったなぁ。スタジオに入ってその場でプレイして、こういう曲が出来上がったって感じ。まあ、その結果には自分たちでも驚いてるけどさ(笑)」(デヴィッド・マッケイブ:以下同)。
と、のっけから脱力的なコメントをかましてくれたデヴィッド君。しかし謙遜しながらも、そのサウンドスケープは驚くほど緻密で、かつ〈してやったり〉な巧妙さに溢れている。60'sのソウル・ミュージックを基調としながらサイケやファンク、ニューウェイヴなど、さまざまなサウンドを〈墓から掘り起こし〉、それを現代的に再構築したのがこのアルバムなのだ。良くも悪くも〈リヴァイヴァル〉という表現に象徴される、過去を焼き直したようなものとは一線を画す、真の意味でのモダンな作品となっているのだ。まさにしてやったり!!
「スタジオに入る前からハッキリしていたことは、古臭いアルバムを作りたくないっていう点。まるで50~60年代に作られたようなサウンドにはしたくなかったんだ。過去の音楽に今風のスパイスを効かせたアルバムにしたかったんだよ」。
もともとはメンバー全員が別々のバンドに在籍していたのが、「偶然にも3~4週間という期間のうちに、すべてのバンドが解散した(笑)」ことがきっかけでズートンズは動き出した。「マッドネスやスペシャルズが好きだから」という理由でサックス奏者を加えたりするなど、雰囲気に任せての〈行き当たりばったり感〉の強いバンドだが、結果として、それがコーラルに続くリヴァプール・シーンを牽引するバンドにまでなろうとしているのだから、偶然とは恐ろしいというか……。
「う~ん、俺はリヴァプールのシーンに疑問を持っているね。リヴァプールのバンド=ひとつのジャンル、つまりはコーラルのコピー・バンドとしてしか見られてないんだから。どのバンドにも個性があるのに、プレスからはそういう風に表現されちゃってさ。俺たちなんてこのバンドを結成して、まだ1、2年だってのにね。ズートンズはズートンズであり続けるし、俺たちはグッド・サウンドを作り続けているんだ。そして今、自分たちのサウンドってのを見つけたんだ」。
確かに、多くのニューカマーがチャートに顔を出す昨今のUKシーンは活気に満ち溢れているようで、その実、かつて幾度となく見られたムーヴメントの盛衰を感じさせる危うさもある。そんな喧騒の中、せっせと墓掘りに勤しみながらズートンズは一体どこに向かっているのだろう?
「スバリ言って、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの現代版!」。
5月には同郷のバンディッツを従えての来日公演という、ズートンズ版の〈暴動〉がいよいよやって来る。これは必見ですぞ!!
「ステージではプロフェッショナルかつ思いっきり楽しむということが、ズートンズの揺るぎないポリシーなんだ。5月のライヴでもジャンクでファンク、そしてセクシーな(笑)ショウをするから楽しみにしていてくれよ!」。
PROFILE
ズートンズ
2002年春、リヴァプールで結成。デヴィッド・マッケイブ(ヴォーカル/ギター)、ボーヤン・チャウドリー(ギター)、ラッセル・プリチャード(ベース)、ショーン・ペイン(ドラムス)、アビ・ハーディング(サックス)の5名で構成されるロックンロール・バンド。当初はコーラルと共に〈リヴァプール・シーン〉の一部として語られることが多かったが、シングル“Devil's Deal”や“Creapin' An' A Crawlin'”で独自の音楽性をアピールすることに成功。なかでも今年1月に発表された先行シングル“Pressure Point”はメディアから高い評価を受けている。このたびファースト・アルバム『Who Killed.....The Zutons?』(Deltasonic/S2/ソニー)がリリースされたばかり。