インタビュー

!!!


 2003年にリリースされたシングル“Me And Giuliani Down By The School Yard (A True Story)”で、一躍全世界注目の的となったサクラメント&ブルックリンの混合チーム7人組。バンド名である!!!は〈チック・チック・チック〉でも〈パウ・パウ・パウ〉でも〈バン・バン・バン〉でも〈アホ・アホ・アホ〉でも好きなように呼んでいい。ようするに同じ単語を3つ並べればOKなのだ。そんなネーミングの由来は、映画「ブッシュマン」で主人公が鳴らす舌打ちの字幕が〈!!!〉だったから……ってのもステキ。

 一方、彼らが鳴らす音は実にダンサブルでファンキーでソリッドなディスコ・サウンド。だからどうしても昨今のネオ・ニューウェイヴ・シーンの代表的存在として語られることが多いんだけど、いやいや根っこにあるのは、やはりアメリカン・アンダーグラウンド・ハードコア~パンクだったりするからおもしろい。

「ネイション・オブ・ユリシース、ヘロイン、ブラッツ、それから日本のティーンジェネレイトも好きだったよ。それまでハードコアとかパンクって、暴力的でマッチョなイメージがあったんだけど、僕たちの頃のサクラメントって、どんどん新しい要素を持ったバンドが出てきてたんだ。ダブだったり、ジャズだったり、さまざまな音楽が混ざり合ってね。そしてみんなで励まし合い、助け合ったりして、そんなパンク・コミュニティーで僕たちも育ってきたんだ」(ジョン・ピュー)。

 実際、ニック・オファーをはじめメンバーのうち3人は、ヤー・モスというハードコア・バンドを7年もやっていた。そのスタイルはカオティック・ハードコアという部類に入るもので、どう考えても現在の彼らとは結び付きそうにない。トータスしかり、フガジしかり、ダッシュボード・コンフェッショナルしかり……、彼らにも〈元ハードコア・バンド〉という歴史があるんだけど、いまとなってはそれが直接〈音〉として現れているわけではない。しかしココには、確実に〈ハードコア〉が存在する。そう、それは〈精神的なハードコア〉という意味。生きるうえでのパンク・スタイル。それぞれが培ってきた〈攻めの姿勢〉、そして〈音楽的探求〉という事実こそが、彼らにとっての〈ハードコア〉であり、〈パンク〉なのだ。音として新たな発見ができなくなった今のハードコア~パンク・シーンだからこそ、!!!も未来に向かって進み続けている。

「もちろん今だってパンク・バンドだと思ってるよ。だって過去のルールを壊すことがパンクだと思うし、それがDIYなんだ」(ジョン)。

 そして届けられた待望のニュー・アルバム『Louden Up Now』。このグルーヴの中には確実に〈ポスト・パンク〉〈ポスト・ハードコア〉が存在している。それも腕を組んで難しそうな顔をしている頭デッカチなものではなくて、〈Let's Party ~!!〉的なア
シッドさとファニーさがいっぱい。とにかく聴いて、観て、踊らな損、損。

「もともとストイックじゃないからね。スケーターがそのままバンドを始めたようなものだから。だからフガジとも話が合わないと思うよ(笑)」(ニック・オファー)。

「ドライヴしながらでもセックスしながらでもイイから楽しんで聴いてね!」(ジョン)。

 ちなみに!!!のメンバーのうちの3人は、ドラッグ・シティーのアウト・ハッドにも在籍。こちらはダブ、エレクトロも絡めたエクスペリメンタル・アプローチで、さらにストレンジなスタイルを展開。まだまだ彼らのパンク~ハードコア道に行き止まりはない。

PROFILE

チック・チック・チック
97年、サクラメントにて2つのパンク・バンドが合流する形で結成。メンバーは、マリオ・アンドレオーニ(ギター)、ダン・ゴーマン(ホーン)、ニック・オファー(ヴォーカル)、タイラー・ポープ(ギター)、ジョン・ピュー(ドラムス)、ジャスティン・ヴァン・ダー・ヴォルゲン(ベース)、アラン・ウィルソン(ホーン)の7人組。2000年にファースト・アルバム『!!!』を発表し、その後もシングルなどをコンスタントにリリース。2003年に発表されたシングル“Me And Giuliani Down By The School Yard (A True Story) ”が、世界中のメディアで話題を呼び、バンドが注目を集めるきっかけとなる。6月2日にはセカンド・アルバム『Louden Up Now』(Warp/BEAT)が日本先行リリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年06月03日 17:00

更新: 2004年06月03日 18:06

ソース: 『bounce』 254号(2004/5/25)

文/小林 英樹