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インタビュー

Slipknot

絶望的な状況を乗り越えたロック怪獣がプレゼンする、驚異的な情報量を誇るニュー・アルバム!


 彼らの日ごろの動向を細かく追っている熱心なファンなら先刻承知だろうけど、スリップノットは一時〈解散〉しても不思議じゃないほど、瀕死の状態にあった。99年作『Slipknot』、2001年作『Iowa』なる2枚のアルバムと、凶暴性の高いライヴ・パフォーマンスで世界中に星の数ほどのファンを作った、いわば〈スーパー〉が付くほどのビッグ・へヴィー・ロック/メタル・バンドがそんな状況に陥るのは尋常じゃないと、まだ彼らのことをよく知らない人でも思うだろうけど、ウソ偽りなし、これは紛れもない事実だ。現にフロントマンであるコリー・テイラーは感情を抑え切れず、サイド・バンドであるストーン・サワーの公式HPに〈スリップノットはもう1枚作品を作り、ワールド・ツアーをやったあとに解散する〉と書き込み、大騒ぎになったこともある(後にみずからが否定)。

「いまもあれに関しては後悔していない。当時は本当にそう思ったから」(コリー・テイラー、ヴォーカル:以下同)。

 しかし、彼らは見事なまでに復活を遂げた。バラバラになった9人のメンバーがふたたびひとつになり、バンドとしても、また友人としても改めて絆を深め、新作『Vol.3(The Subliminal Verses)』をリリースしたのだ。

「過去、内部にはいろんな問題があった。ビジネス面などが上手くいかず、それが原因でメンバーの間で不信感が増大した。そうした問題を時間を掛けて片づけていった結果、新作を作る準備が整ったときには、俺たちはまた友人同士に戻っていた。新作はそうしたプロセスを経て、完成を見たんだ」。

 スリップノットの音楽は極めて激しい。その激しさもハンパじゃなく、ライヴ・パフォーマンスと同様の凶暴性すら伴うもので、同系統のへヴィー・ロック/メタル・バンドのなかでは完全に突出している。新作の何が凄いかっていうと、その極めて激しい音楽が完全にアーティスティックなレヴェルへと昇華していることだ。俗に言う〈スリップノット節〉は明確なまでに残しつつさらなる磨きを掛ける一方で、これまでになかった曲調に挑戦し、アコギやヴァイオリンやストリングスを持ち込むなどして、これまでにやったことのなかったサウンド・メイキングをも実践している。それでも〈スリップノット像〉がまったくブレないところもさすがだけど、極めて激しい音楽を非常にクォリティーの高いクリーンな音質で聴かせるところもアッパレである。レッド・ホット・チリ・ペッパーズとの仕事でつとに有名な、鬼才リック・ルービンのプロデュースによるところも大きいに違いない。コリーは自信タップリにこう言い切る。

「バンドとしての新しい領域に切り込むことができたのが、新作の最高の成果のひとつさ。以前の俺たちは、箱に閉じ込められていて外に飛び出せないような気がしていた。だけど新作でその箱の壁を蹴り倒し、外に飛び出して変化することができたんだ。そう、新しいタイプの音楽がやれるようになったんだ。もちろんリックのヘルプも大きかったよ」。

 スリップノットはファンにとって〈ヒーロー〉であり、世界のへヴィー・ロック/メタル・シーンにとっては、今後の動向の鍵を握る〈牽引車的存在〉である。そんな彼らが幾多の困難を乗り越えただけでなく、前以上にスケールアップして戻ってきた。まさにWelcome Back!!である。

▼スリップノットのメンバーによるプロジェクト作品を一部紹介。

▼スリップノットのアルバムを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年06月17日 13:00

更新: 2004年06月22日 12:54

ソース: 『bounce』 254号(2004/5/25)

文/有島 博志