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インタビュー

KEANE


 あのフランツ・フェルディナンドですら成し得なかった偉業である。UKチャート初登場1位、同時にプラチナ・アルバム達成という離れ業を演じてみせたキーンのデビュー・アルバム『Hopes And Fears』がいま、UK、そして世界中の人々にとって〈とても大切なアルバム〉になろうとしている。

「いやもう信じられなかったよ。ただ単にアルバムを発表できるというだけで素晴らしいことなんだからね」(リチャード・ヒューズ)。

「特に2週目は、僕たちのアイドルであるモリッシーを抜いてしまった。夢みたいな話だよ(笑)」(トム・チャップリン)。

 そう、いまやこの〈キーン・フィーヴァー〉は、天下のモリッシー様もひれ伏す勢いでシーンを席巻しているのである。そのカラクリはなんてことない、〈優れたメロディーと唄〉というシンプルかつ正しい魅力を彼らが備えているからだ。

「僕たちはシーンのどこにもフィットしないと思うんだ。ここ数年、UKロック・シーンが盛り上がってて、こういう時期に活動できるのは素晴らしいと思うけど、僕たちはあくまで自分たちがやりたいことをやってるだけ。ほかのバンドといっしょにムーヴメントを作ろうとか、考えてるわけじゃないよ」(ティム・ライス・オクスリー)。

 メンバー全員が同じ町で育ち、同じ学校に通い、そして同じ音楽を聴き続けたことで、キーンという共同体は生まれた。ビートルズに入れ込んでいた3人の若者たちは、そこから偶発的にギター・サウンドを削ぎ落とし、結果、ピアノ・サウンドというスタイルに辿り着く。

「もともと僕たちは、古典的なアルバムが好きだってことが一つある。最先端のサウンドよりも、スタンダードなサウンドをいつも意識していると思う。なによりもまず、メロディーと曲そのものを伝えることを最優先にしてきたし、それを続けているだけなんだ」(リチャード)。

 アルバム『Hopes And Fears』には、奇をてらうことなく、ただひたすらに正直なメロディーしか存在しない。しかしいま、そのメロディーが世界を魅了しようとしているのだ。なにより素敵なことではないか!

「僕たちは、みんながいっしょに歌いたいと思うような、曲の一部になりたいと感じるような作品を書き続けていくつもりさ。あと、歌詞とかが特にそうだけど、常に正直であるってことも大切なことなんだ」(ティム)。

 そんなキーンが〈フジロック〉にやってくる。彼らが構築する〈祝福的空間〉は、今年の夏フェスにおけるハイライトの一つになるだろう。

「日本のオーディエンスは、UKの音楽に対して凄くオープンな姿勢で接してくれるということを知っている。だから日本でアルバムをリリースし、日本を訪れることを凄く楽しみにしているんだ。いまはどんな場所なのか想像もつかないけど、早くそっちに行きたいよ」(リチャード)。

「もしもみんなが、まだ僕たちのアルバムを聴いていなくて、ピアノとヴォーカルとドラムという編成のバンドだってことしか知らないとしたら、〈ライヴではちょっと物足りないんじゃないか?〉って思うかもしれない。でもきっと、かなり驚くんじゃないかな? ステージを走り回る僕と、それぞれの楽器を弾きながらヘッド・バンギングしてるティムとリチャードの姿にね(笑)」(トム)。

 まずはとにかくキーンを聴き、そして体験してほしい。未来のロック・シーンを語るのは、それからでいい。

PROFILE

キーン
97年、サセックスにて結成されたトム・チャップリン(ヴォーカル)、ティム・ライス・オクスリー(ピアノ)、リチャード・ヒューズ(ドラムス)で構成される3人組。昨年発表されたデビュー・シングル“Everybody's Changing”のヒットを受け、「NME」紙などのメディアから高い評価を得る。このトピックを足がかりにその後リリースされたシングルもチャートの上位にランクインし、今年3月にはトラヴィスのツアー・サポートをするなどバンドの知名度を上げる。本国で先行リリースされたファースト・アルバム『Hopes And Fears』(Island/ユニバーサル)は、5月17日付けの全英アルバム・チャートで初登場No.1を記録している。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年07月01日 17:00

更新: 2004年07月01日 19:01

ソース: 『bounce』 255号(2004/6/25)

文/加賀 龍一