インタビュー

KAYO(POLYSICS)

すべてのミュージック・ラヴァーに響く、極上のポップ・アルバム! (POLYSICS ハヤシ・談)


 POLYSICSのキーボード担当、KAYOが5曲入りアルバム『三つ編みヒロイン』でソロ・デビューする。表題曲は数多のヒット曲を連発したゴールデン・コンビ、松本隆×細野晴臣の手によるもので、サウンド・プロデュースはPOLYSICSのハヤシが全面協力。トレードマークのツナギもヴォコーダーもなく、彼女の歌声は、可憐で涼やかに、ふわりと届けられた。

「ただもう歌うのが本当に楽しいなって。POLYSICSでも歌ってはいたし、それも楽しかったんだけど、それは〈音〉として捉えることが中心で。それとは違った感じで〈歌〉を歌ってみたい気持ちはずっとあって」。

 はっぴいえんどの71年作“夏なんです”が男の子の視点から〈夏の原風景〉を歌ったものだとすれば、“三つ編みヒロイン”はその女の子ヴァージョンであり、2004年度版“夏なんです”とも言えよう。

「そもそも最初に歌ったのが“夏なんです”のカヴァーで、松本さんがそれを気に入ってくださって。そこから広がったんです。松本さんの詞だけでも凄いと思ってたのに、曲をどうしようって時に、〈細野さんだったらいいな〉って言ったら、松本さんが〈ああ、じゃ訊いてみようよ。いいんじゃない?〉って」。

 アルバムから漂ってくるのは、誰の心にもそれぞれ焼き付いているであろう、暑くて長い、でもあっという間の夏のノスタルジー。入道雲と蝉の声、乾いた道と木陰の涼しさ。

「詞を読んだ時、凄く驚いて。確かに学生時代はずっと三つ編みだったし(笑)、私の田舎では海も山も川もすごく身近なものだったから。その記憶が詞と綺麗に重なってた」。

 素直な気持ちで楽曲と向き合って、身体で空気を感じ取って歌うこと。これを自然と実践できてしまったのがこの作品のマジックであり、上澄みをすくったような清々しいヴォーカルの隠し味だ。

「ちゃんと歌うのが初めてだったし、どう歌えばリラックスできるかなって……靴脱いで歌ったりとかして(笑)。でもある時、自分の田舎の海や山の風景を思い浮かべながら歌ったら、急に声が変わって。それが自分でもわかるくらいで、凄く気持ち良く歌えた。録り終わった時に〈急にどうしたの!?〉ってディレクターに言われたし(笑)」。

 ほかにも、明るく弾けたKAYOのオリジナル曲、ハヤシ作の強烈な80'sポップ・チューンなど、5曲入りとは思えぬ豊穣なヴァラエティー。

「初めは松本さんや細野さん、POLYSICSを知っている方が手に取ってくれると思うんですが、そういう関わりがない人で、例えば何かで聴いて〈いいな〉って思って手にしてくれたら嬉しいです」。

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掲載: 2004年07月08日 12:00

更新: 2004年07月29日 17:09

ソース: 『bounce』 255号(2004/6/25)

文/鬼頭 隆生