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インタビュー

Wilco

ウィルコの最新アルバム『A Ghost Is Born』は、走り続けるバンドワゴンの近況報告だ!!


〈もしゴールにほど遠いところにいたとしても/そこには僕らが行かなくちゃならないパーティーがあるんだ/もし君がまだロックンロールを愛しているならね〉──ウィルコは“Misunderstood”でそんな風に歌ってる。イリノイで活躍していたオルタナ・カントリー・バンド、アンクル・テュペロが母体となって結成された彼らは、95年に『A.M.』でデビュー。以来10年間、彼らは地平線の向こうのパーティーをめざして長いロードを続けてきた。まだギター・ポップとしてのあどけなさも感じさせた『A.M.』から一転、2枚組というデカいキャンバスに重厚なタッチでロックンロールへの愛情を描きなぐった『Being There』は、
彼らの旅路の最初のマイルストーン。ストリングスや美しいハーモニーがフィーチャーされた3作目『Summer Teeth』でふと和らいだ笑顔を見せつつも、バンドは次に思い切った賭に出る。パートナーに選ばれたのはジム・オルーク。新しい方向性をめぐって何度も繰り返されるリハーサル。その結果としてのバンド内の分裂。さらにはレーベルからの一方的な契約解除……この苦難の時期はドキュメンタリー映像作品「I Am Trying To Break Your Heart」に詳しいが、それを乗り越えて発表された傑作が『Yankee Hotel Foxtrot』だった。ここではデビュー以来、バンドのテーマのひとつだった音響面へのこだわりを大胆に昇華。ウィルコは新しい領土へと足を踏み入れたのだ。

 そして、2年。彼らから届けられた新作『A Ghost Is Born』は、前作でミックスを担当していたオルークが共同プロデューサーとしてクレジットされ、サウンドはますます鋭利に。絞られた音数が交差するなかで醸し出される幽玄なサウンドスケープは、レイドバックしない、真にオルタナティヴなロックンロールだ。ビリー・ブラッグと組んだ〈Mermaid Avenue〉シリーズから、バンドのフロントマン、ジェフ・トウィーディとオルークによるルース・ファー。バンドのベーシスト、ジョン・スティラットによるオータム・ディフェンスなどといったサイド・プロジェクトの本流に、こんなにも凄い未知の荒野が広がっているとは。もし君がロックンロールを愛しているなら、この荒野をめざすべきだ。

▼ウィルコのアルバムを一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年07月15日 11:00

更新: 2004年07月15日 16:54

ソース: 『bounce』 255号(2004/6/25)

文/村尾 泰郎