インタビュー

BANK$

小宮山雄飛の新プロジェクトは、DIY精神に満ちた〈東京感〉が随所に垣間見られる逸品だ!


 ホフディランを休止させ、小宮山雄飛が新たにスタートさせたソロ・プロジェクト、BANK$のファースト・アルバム『SUNSHINE LP』には、USのオルタナ/インディーにとりわけ深い造詣を持つ彼のインドアなポップ感が満ち満ちている。バンドによるレコーディングを一度通過させ、それを宅録的質感の濃い音色のセンスとバランスで、キラキラとしたブレイクビーツ、ガレージ・ロックのざっくりとした手触りに結実させている。

「自分の部屋にあるCDをガーッと凝縮して一枚にしたら、こういうものになるんじゃないかな(笑)。ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツとかべックやビースティ・ボーイズのように、生のバンドの音と打ち込みやサンプリングが良い感じで混ざっている音が昔から好きだったんですよね」。

 BANK$は一貫したコンセプトというよりも、やりたいこととバンドのパワーを見据えながら常によりよいポジションを探しているようだ。今作においては「プリンスばりのひとりの作業」を経て、根っからのインディー・ポップ・マニアらしいサウンドのヴァリエーションをとおして、東京生まれの彼だからこそ鳴らすことのできる東京感が立ち現れてきているところが興味深い。

「“さいきんぼくは”にもあるんですけれど、世界中を旅することで、みんな働いて頑張って生きているんだっていうのを東京でも感じるんですよ、臭いメッセージじゃなくて。そういう仲間感を新しい東京の文化として出せればなと」。

『SUNSHINE LP』のジャケットには四角くグラフィカルな太陽が描かれている。彼は今作において作詞作曲/アレンジ/プロデュース/レコーディング/ミックスからこのジャケット制作までを行った。この飽くなきDIY精神がBANK$の真骨頂なのだろう。

「僕もバリバリ引き篭って音作りしたりしているんですけれど(笑)、〈ちょっと太陽を浴びてみようぜ〉ぐらいのメッセージがあると気持ちいい。そんな提案ができたら、意外と未来は明るいんじゃないかな。僕がいつも言ってるのは〈Do It Yourself〉……部屋にナードっぽいダメなやつらが集まって、遊びみたいな感覚で取り組んでいて、それがそのまんまでブレイクしたらカッコイイと思うんですよ。BANK$ではそういう楽しさを出せればいいですね」。

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掲載: 2004年07月29日 12:00

更新: 2004年07月29日 18:41

ソース: 『bounce』 256号(2004/7/25)

文/駒井 憲嗣