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インタビュー

santara


 もしこれを読んでいるあなたがFMリスナーだったら、あるいは有線放送を日常的に耳にしている立場の人だったら、彼らのメジャー・デビュー曲“バニラ”を一度は耳にしたことがあるはずだ。ヴォーカル/ブルース・ハープの田村キョウコとギターの砂田和俊の2人からなるサンタラは、京都の大学サークル時代に結成されたバンドを基盤としたユニット。「サークル時代は、フォークとかブルースとかカントリーとか、そういう音楽をやっている人が自分の周りにたくさんいたから、子供はフォークをやって、大人はブルースをやるものだと思っていた(笑)」(田村キョウコ)と語るように、彼らのファースト・アルバム『RIVERMOUTH REVUE』には、アメリカン・ルーツ・ミュージックを〈日常の糧〉としている人間による、ハイブリッドなポップスが10篇収められている。FMでパワープレイされたシングル“バニラ”や“うそつきレノン”などを一聴すればわかるのだが、サンタラの曲は聴くものに知識を強要してこない。〈過去の産物とテクノロジー〉〈人間臭さと都会っぽさ〉〈男性性と女性性〉それらの絶妙な折衷に、少々エキセントリックなスパイスをちりばめながら彼らにしか出せない魅力を放っているのだ。

「大事なのは、フォークやブルースの手法を借りつつも自分たちを表現するっていうこと。ブルースと今の音楽を繋ぐような人はたくさんいるじゃないですか。例えばメジャーな人でいえばエリック・クラプトンとか。そういう繋がりのチェーンの一つになれたら嬉しいと思うんです。オーセンティックなブルースとかフォークなんかを聴く入り口になって、なおかつずっと聴いてもらえるような存在になりたいですね」(田村)。

「綺麗に整いすぎている音楽は、誰がやってもいい。キャラクターが見える音楽じゃなければ、自分たちがやる必要はないと思うんですよ。例えば、ヴォーカルにしても、(田村よりも)ブルースっぽい声を持っている人は他にいるんだろうけど、僕らはブルースやフォークをそのままやろうとは思っていないから」(砂田和俊)。

 新作では、田村の言う〈繋がりのチェーン〉に彼らが参加するのを手助けするかのように、椎名林檎やスガシカオのプロデューサーとして知られる森俊之が数曲で参加している。

「私たちは、もともとアコースティック・ギターとヴォーカルの2人だけで成立する音楽を作っているんですよ。そしてそれは、どういう形にでも発展させることができる。今回森さんには、私たちの曲を〈もっといいものにする〉ための可能性を冷静な目で見てもらった」(田村)。

「10曲入っていれば、10曲分の世界観があるということですから。レコーディングはそれをどの程度色付けしていくのか、という作業でしたね。自分たちでは、すごく成功したと思っているし、森さんが客観的に曲を見てくれたということにも助けられた。昨年50本くらいやったライヴで自信が付いたことも、レコーディングにいい形で反映されているんだと思います」(砂田)。

 取材中にたびたび感じたのが、メジャー・デビュー・アルバムのリリースに動じることのない彼らの〈ふてぶてしさ〉だ。それは自信そのものからくるものではないだろうか。あらゆる過去の産物が掘り尽くされ、〈現代性〉が捉えづらくなった今、ルーツと自分たちとの距離を見据えている彼らから〈ゆるぎなさ〉を感じるのは筆者だけではないはずだ。

PROFILE

サンタラ
97年、京都某大学の音楽サークルで出逢った田村キョウコ(ヴォーカル/ブルース・ハープ)と砂田和俊(ギター/ヴォーカル)が前身となるバンドに加入。卒業後の99年より、サンタラとして2人で活動を開始する。東京、京都、大阪を中心にアコースティック・ライヴを行い、2003年5月にミニ・アルバム『High & Low』をリリース。ブルース、フォーク、カントリーなどのアメリカン・ルーツ・ミュージックを独自に昇華させたサウンドが話題を呼び、2004年、シングル“バニラ”でメジャー・デビューを果たす。続くセカンド・シングル“うそつきレノン”もFMを中心に好評を博し、このたびファースト・フル・アルバム『RIVERMOUTH REVUE』(エピック)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年08月05日 13:00

更新: 2004年08月05日 20:36

ソース: 『bounce』 256号(2004/7/25)

文/ヤング係長