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インタビュー

The Mooney Suzuki


 いま日本でいちばん多い苗字は〈佐藤〉だが、いまロックンロール・シーンでいちばんアツいのは〈鈴木〉! クラウト・ロックの伝説、カンのヴォーカルだったダモ鈴木とマルコム・ムーニーの名前をまんま合体させた、その名もムーニー・スズキのこと。そんな彼らの3作目となる新作『Alive & Amplified』がついにリリースされる。前作『Electric Sweat』を3日間でレコーディングしたのに対して、今回は半年もの期間をかけた〈ヤル気〉盤。サウンド・プロダクションにここまで手を入れた本作のレコーディングは、バンド史上初にして重要な試みだったはずだ。

「これまでは〈少なければ少ないほどサウンドは豊かになる〉というアプローチで、常に自分たちが使うサウンドに制限を与えていたんだ。でも今回はこれまでより金も時間もあったんで、その逆をやってみようって思った。いつものダーティーなサウンドとは対極に位置する密度の高い、幾重にも音の層が重なり合ったサウンド。フィル・スペクターの〈ウォール・オブ・サウンド〉みたいなヤツをね」(サミー・ジェイムズJr:以下同)。

 そのチャレンジの強力なパートナーとなったのは、これまでアヴリル・ラヴィーンやクリスティーナ・アギレラを手掛けてきたプロデューサー集団、マトリックス! まさに異色の組み合わせだ。

「向こうから声を掛けてきたんだ。オレのこれまでの人生で〈敵〉とみなしていたタイプのプロデューサーが、オレたちのために曲を書こうとしてる。こんな誘惑に勝てっこないだろ? どういう結果になるのか知りたくてオレたちは夢中になった」。

 で、どうなったか? バンドの持ってる凶暴なギター・サウンドと、マトリックスのやたらフックが効いたプロデュース・ワークが見事に融合、ハイクォリティーな全裸ロックが誕生した。とりわけメロディーとハーモニーの充実ぶりときたら!

「メロディーとハーモニーはマトリックスの得意技だろ。それも彼らといっしょにやろうと思った理由の一つだね。マトリックスはバンドのパーソナリティーを引き出してアルバムに盛り込む手助けをしてくれた。もちろんお互いの美意識はまったく違ったものだから、よくブツかったよ。でもその衝突のエネルギーがアルバムにパワーを与えているんだ」。

 そんななか、“Messin' In The Dressin' Room”でのサミーと女性ヴォーカルの色っぽい掛け合いについてはこんな発言も。

「あの声はマトリックスのローレン(・クリスティー)なんだ。彼女はすごく猥褻なユーモアの持ち主でね(笑)。それにアヴリルの“Sk8er Boi”や“Complicated”を書いた女性が、オレたちの曲でギター・ソロと〈セックスする〉っていうアイデアも気に入った」。

 ティーン・ポップの過激なポップセンスを大胆に採り込んだ今回のコラボレーション。そこにはバンドが曲提供/カメオ出演した映画「スクール・オブ・ロック」との関係も考えずにはいられない。「でも」と、サミーは注意深く説明する。

「バブルガム風な味付けがあるからって、子供だけを相手にしているわけじゃない。たとえばJD・サリンジャーの小説がそうであるように、〈若者向け〉であると同時に大人にとっても大きな意味があるものだと思う」。

 子供から大人までに向けてバンドが発するもの、それは紛れもない〈ロックンロール不滅説〉だ。

「ロックンロールは炎と同様、地上に人類どころか生命が現れる以前から宇宙に存在していたエネルギーなんだ。オレたちは単に猿から進化して、ようやくそれをコントロールすることができるところまできただけ。オレたちが消えてしまったあとも、ロックンロールはそこにあり続けるのさ」。

 つまりパーティーはまだまだ続くってこと。そしてムーニー・スズキこそ、そのパーティーのプレミアム・チケットなのだ。

PROFILE

ムーニー・スズキ
97年、NYのアート・スクールに通っていたサミー・ジェイムズJr(ヴォーカル/ギター)とグラハム・タイラー(ギター)らで結成。その後、オージー・ウィルソン(ドラムス)とマイケル・マイルス(ベース)が加入し現在のラインナップとなる。99年、〈NY・ケイヴストンプ!・ガレージ・ロック・フェスティヴァル〉に最年少アクトとして出演。翌年9月にリリースされたデビュー・アルバム『People Get Ready』が、CMJチャートで12位をマークしバンドの評判をUS全土に広めることとなった。2002年のセカンド『Electric Sweat』でメジャー契約を果たし、8月4日にはサードとなるニュー・アルバム『Alive & Amplified』(Columbia/ソニー)が日本先行でリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年08月12日 12:00

更新: 2004年08月12日 18:11

ソース: 『bounce』 256号(2004/7/25)

文/村尾 泰郎