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インタビュー

The Polyphonic Spree

メンバー増量!! さらに力を付けたテキサスの白装束チームが、待望のセカンド・アルバムをリリースしたぞ!!


〈60年代、ベトナム戦争に反対する若者たちはドラッグで幻覚を見い出し、そこに戦争も差別もない自然回帰の桃源郷を……〉──ロック史をかじったことのある人なら大概出くわすであろうフレーズである。こうした考え方は、特にパンク~オルタナ時代以降の現実重視主義の前には〈現実逃避すぎる〉と長いこと敬遠の対象にされていたものだ。しかし、そんな60'sサイケのスピリットが実はまだ有効であることを、極限までデフォルメして世に問うバンドがいままたシーンに現れてきている。それがアメリカはテキサス出身の総勢23人によるサイケデリック・ロック・バンド、ポリフォニック・スプリーだ。

 宗教団体、はたまた古代ギリシャ人を思わせる白装束の衣装を纏った異様な演奏者の面々に、過去の遺物として完結したと思われていたソフト・ロックを21世紀のいまに進化させようとする音楽アプローチ。前作『The Beginning Stages Of The Polyphonic Spree』で登場した際、メディアの彼らへのスポットの当て方は大概そういうものであった。だが、彼らの存在意義はそうした表面的なキッチュさだけにあるのではない。アナログ楽器を駆使した大編成は、テクノロジーに頼ることによって工夫する努力を怠ってしまっていた現在の音楽シーンに対するアンチテーゼ。そして、徹底した楽園指向。これは社会の狂気や荒廃した日常を歌うことが、単なるこけおどしにしか過ぎなくなり硬直化した〈90'sオルタナティヴ・ロック〉に対してのカウンターでもあるのだ。

〈現実的にネガティヴなことばかりを歌ったところでなにも解決しない〉。彼らはみずからの立ち姿だけでそう語りかけている。そして、そのことはニュー・アルバム『Together We're Heavy』でもあきらか。〈ひとりの力は小さいが、みんなで団結すれば大きくなる〉──そうした前向きで強い意思が込められた表題と色鮮やかになった装束が、先行きの見えない危機状態に陥ったいまの世にとにかく眩く光る。そしてそんな彼らの想いは、現在の世界の不安で危機的な秩序を作り出したのが、同郷テキサスのブッシュ大統領であることを考えるとより一層強くなるのだろう。いまの世にもっと欲しい刺激である。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年08月12日 12:00

更新: 2004年08月12日 17:18

ソース: 『bounce』 256号(2004/7/25)

文/沢田 太陽