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インタビュー

Slum Village

絶頂期を迎えつつあるスラム・ヴィレッジ。地元愛に溢れた新作は過去最高の名作だ!!


 スラム・ヴィレッジはついにある種の呪縛から逃れた──彼らがT3、バーティン、ジェイ・ディー(J・ディラ)のトリオでお目見えした当時、ディラの作り出すサウンドは神がかり的な支持を集めていたし、彼らも〈ディラのグループ〉として評価された。だが、本当にそれだけだったのか? 例えば、シド・バレット在籍時しかピンク・フロイドと認めないのか? 結果論になるが、ディラに代わってエルザイが加わった2002年の『Trinity』、そしてT3とエルザイのデュオになって放った新作『Detroit Deli(A Taste Of Detroit)』を順々に体感すればすぐにわかる。スラム・ヴィレッジはいま最高潮にあるのだと。

 新作での彼らは、これまでの軽薄で女好きなリリックに加え、シリアスな側面や個々の内面も垣間見せている。働くシングル・マザーへのメッセージとなった“Old Girl/Shining Star”について「皆が女性をビッチとか呼んでるけど、オレたちは別な形で彼女たちのことを取り上げたかったんだ」(エルザイ)と話す姿は、グループの方向性の明確な変化を物語る。

「ソウル・ミュージックであるだけじゃなく、ある種のリアルさを持ち込みたいと思ったんだ。エルザイはグループをずっと外側から見ていたからこそ、これからはもっとシリアスな話題にも触れるべきだと指摘してきた」(T3)。

 そのトライを支えるのは地元デトロイト~ミッドウェストをレペゼンしたサウンドだ。数曲でドゥウェレが歌い、先行シングル“Selfish”のカニエ・ウェスト(シカゴ出身)、“Do You”に迎えたミシガンの先達MCブリード、そしてディラ……とゲスト陣も地縁中心となっている。多彩なトラックは、ほぼすべてが若手のブラック&ヤングRJによるもの。デトロイト・テクノに通ずるスペイシーでソウルフルな触感が心地良い。

「オレたちは単にやるべきことをやってきたまでさ。そうしてると、ついにはそれをやる勇気に対してリスペクトをくれる奴が出てくるんだ」(T3)。

 現在は同郷のD12とツアー中だという彼らが、真のキャリアを刻みはじめるのはこれからだ。

▼スラム・ヴィレッジの近作。

▼『Detroit Deli(A Taste Of Detroit)』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年08月19日 15:00

更新: 2004年08月19日 23:29

ソース: 『bounce』 256号(2004/7/25)

文/真木 瑞穂