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インタビュー

FRONTIER BACKYARD


 スカコア/スカ・パンクの最盛期、圧倒的なセンスとクォリティーでシーンを牽引しながら、同時にシーンから浮き上がっても見えるという異様な空気を漂わせたバンドがあった。その名をSCAFULL KINGという。彼らはジャンルこそスカ系に大別されたものの、厳密に言えばミクスチャー・バンドだった。ファンクにスウィング・ジャズにモータウン、果てはクラシックの要素までを採り込んだ極彩色の万華鏡サウンドを、ひたすらラウドにアッパーに展開。大挙する観客を鬼のように乱舞させ、周囲の仲間たちを唸らせたバンドである。しかし、約3年半前に渋谷AXにて単独3daysを敢行し、さらなる驀進を確信させた直後に、なぜかぱたりと活動を休止。以来、そのメンバーはやきもきするファンを尻目に、MASTER LOWや、cubismo grafico fiveなどで裏方活動(?)を重ねていた。

 で、そんななか、ついに始動したのがこのFRONTIER BACKYARDである。SCAFULL KINGのSYUTA-LOW TAGAMIと、KENZI MASUBUCHI 、福田“TDC”忠章の3名によるニュー・バンドだ。

 FRONTIER BACKYARDは、もともとはエスカレーターからの作品参加要請によって暫定的に結成されたユニットであり、後に盟友RUDE BORNSの関連作品にも参加したが、ライヴ自体は数えるほど。しかもなぜか北海道や沖縄などの地方ライヴが主だったため、ほぼ謎に包まれた存在だった。しかし今回、初の単独作品であるファースト・アルバム『FRONTIER BACKYARD』が完成したことによって、ついにその全貌が判明することになったわけだ。そしてそのサウンドだが――結論から言えば、SCAFULLと共通する部分ももちろんありつつ、しかしやはり、まったく異なるバンドだったのである。

「もともとSCAFULLで曲を書いてたのがこの3人でしたから、曲的にはいっしょというか、あまり変わらないと思うんですよ。ただ、明確に違うのはホーン隊がいないということと、音に歪みがないということ。逆に言えば、歪ませないでどれだけノリを出せるかということに挑戦したんです」(SYUTA-LOW TAGAMI)。

「サウンド的に難しかったのは、ホーン隊がいないぶん、ギターを前に出さなきゃいけないじゃないですか。僕はSCAFULLではわりとバッキング的なギターを心掛けたんで、今回はギターの出し方、シンセ・ベースとの絡ませ方にかなり悩みました」(KENZI MASUBUCHI)。

 実は2年以上の年月を掛け、コツコツとレコーディングしたという本作の内容は、SCAFULLからさらに進化し、もはやこれはプログレかフュージョンかという領域に到達していた。しかも歪みがないぶん、一聴イージー・リスニングでありながら、楽曲の印象はあくまでポップかつアッパー、そしてエネルギッシュ。プレイヤーとしての彼らの真骨頂が最大限発揮された作品と言えるだろう。また、あえてシンセ・ベースを導入したことによってテクノ・ポップの趣も発するため、YMOからフュージョンに移行した過程を持つ80年代組にも訴える面を持っており、総じてキッズから大人まで幅広く楽しめる内容となっている。

「名前が違う以上、SCAFULLと同じことをやっても仕方ないですしね」(福田“TDC”忠章)。

「あえて言うなら大人になったSCAFULLというか……SCAFULLでは3枚アルバムを出してますが、もしかして6枚目ぐらいにアルバム出してたら、こんな雰囲気になったんじゃないかと(笑)」(SYUTA-LOW TAGAMI)。

 ふたたび表に立つ彼らが頼もしい昨今。今年は活発に活動してくれそうで大変嬉しい。あとSCAFULLももちろん解散したわけではないそうなので、同士諸兄、油断は禁物だ(笑)。

PROFILE

FRONTIER BACKYARD
2001年に活動を休止したSCAFULL KINGのSYUTA-LOW TAGAMI(ヴォーカル/トランペット)、KENZI MASUBUCHI(ギター)、福田“TDC”忠章(ドラム)による新バンド。休止後、SYUTA-LOW TAGAMIはTGMX名義でコンピ『Niw! Stocks』の監修や、同名義でDOPING PANDA『WE IN MUSIC』をプロデュース。一方KENZI MASUBUCHIは、ソロ・アルバム『TALES OF THE AXXE PLAYER』を発表、櫛引彩香『I'II be there』をプロデュース、福田“TDC”忠章とともにMASTER LOWへ参加している。それぞれの活躍が注目を集めるなか、先のコンピで顔を見せたFRONTIER BACKYARDのファースト・アルバム『FRONTIER BACKYARD』(Niw!)が9月3日にリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年09月09日 16:00

更新: 2004年09月09日 17:29

ソース: 『bounce』 257号(2004/8/25)

文/中込 智子