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インタビュー

東京エスムジカ

国境を超えて響き渡るハーモニーが注目を集める3人組が、ついにフル・アルバムをリリース!


 インターネットの普及によって、もはや概念的には国境すら消失してしまったと思える今、21世紀。彼らみたいに、グローバルかつボーダレスな享受性と表現方法を持った新しい才能が現われたとして、何ら不思議ではない。在日コリアン4世の瑛愛(ヴォーカル)と石垣島出身の平得美帆(ヴォーカル)、そして東京出身の早川大地(サウンド・プロデューサー)から成る東京エスムジカ。今年5月にメジャー・デビュー・シングル“月凪”を日韓同時リリースし、その幻想的でオリエンタルなサウンドで一気にラジオ・チャートを賑わせた異色ヴォーカル・ユニットである。

 コンセプトは「アジアをはじめ世界中のエスニック・ミュージックを採り入れて作るJ-Pop」(平得)。このたびリリースされる『World Scra-tch』にも、そうした彼らの魅力が余す所なく収められている。透明で柔らかい歌声を持つ瑛愛、独特な節回しで神話的な美しさを醸し出す平得。この2人の織り成す絶妙なるハーモニーはもちろん、今回のアルバムでは、ムックリ(口琴)、ガムラン、イーリアン・パイプ、スティールパンなどなど、これまでシングル曲で聴かせてきた以上に多種多様な楽器の音色を採り入れ、より〈無国籍〉なイメージへと、その世界を喚起増大させてくれているが、それは歌詞においても同様。日本語、韓国語、ポルトガル語、アイヌ語、英語……彼らの表現方法は実にフレキシブルでイマジネイティヴ。世界平和……と言ったら少し大袈裟かもしれないが、現実においては実現不可能とも思われる〈地球国世界村〉的発想を(音楽というフィールドだから、とはいえ)ここまで軽やかに、しかも〈ポップス〉として為し得てしまうのは、ちょっと凄い。

「でも、いろんな国の楽器を使うからとか、いろんな国の言葉で歌うからとか、自分たちとしては特別なことだとは思ってなくて。これが私たちなりの〈今の東京から出せるポップス〉というか……それをただ楽しんで演っているだけなんで。今回のアルバムでも決してマニアックなことは演ってないし、聴いてくれた人が〈あ、なんだ。エスムジカって結構、幅広い楽曲を作ってるグループなんだ〉って思ってくれたら、それだけですごく嬉しいですね」(瑛愛)。

 折しも、来年は日韓友好40周年。今年から全面解禁となった韓国での日本語歌唱の中でも、彼らはきっと注目を集める存在になるに違いない。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年09月30日 16:00

更新: 2004年09月30日 18:29

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/なかしま さおり