インタビュー

HIRD

またまたイェテボリから新しい才能が登場!! 背後から忍び寄る〈彼女〉にも注目よ!!


 スウェーデン、というかイェテボリ。ステイトレス/スウェル・セッションことアンドレアス・サーグ、アーネスト、ブレス、ユキミ・ナガノ……とフューチャー・ジャズ界隈の名だたる要人を輩出してきている注目の街である。そして、仲間たちの後を追うように登場したのが、クリストファー・ベルグのソロ・プロジェクト=ヒルドだ。上記メンツのバックで演奏していた彼だが、今回のファースト・アルバム『Movin' On』はその独自性と可能性を感じさせてやまない珠玉の作品集となった。本人も「かなり時間をかけたつもりだし、いま自分で聴いても〈こうすればよかった〉とか思うところがないんだよね」と自信ありげだが、昨年のシングル“Keep You Hird”でデビューした時から、その緻密で涼やかなサウンド構築と、この種の作品で軽視されがちなメロディーのセンスは群を抜いていた。ミュージシャンの両親のもと、楽器で遊びながら育った彼は(初レコーディングはわずか4歳の時、父親が制作していた子供向けレコードだとか!)、雑多なバックグラウンドが「僕の作品にいろいろなやり方を与えてくれた」という。

「母がアフリカン・パーカッション奏者だったから、僕はアフリカのレコードをよく聴いてたね。それで6歳でドラムを始めて、ギターやピアノ、タブラも学校で習った。それに混声のメロディーやコードを考える時にクラシックの作曲法は影響を与えていると思うよ」。

 それらの要素を繊細に織り上げた美しい結果が『Movin' On』なのだろう。そして、同作を特別な一枚にしている要因のひとつが、ほぼ全曲で歌うユキミ・ナガノ(詳細は別掲→)の存在だ。彼女はクリストファーが14歳の頃からの親友だそうで。

「英語学校の同じクラスにいて、ジミへンのエッセイについて話してからずっと友達なんだ。夏休みの前の日に彼女が歌っているのを初めて聴いた。忘れらないね。時間が止まったみたいだったよ」。

 なんか勝手にロマンティックな展開だが……そうやって素晴らしい歌声を間近で聴き続けていると、恋心が芽生えたりしないの?

「歌うたびに恋に落ちてるよ(笑)」。

 失礼。しかしながら、ユキミも含めてイェテボリにこれほど才能が集まってくるのはなぜなのだろう。

「わからないな~(笑)。互いにサポートし合って、互いの音楽を聴いているだけで、ただ群れてる感じなんだけどね(笑)。でも、みんなが前進してるのは確かだね」。

 自然とお互いを高め合うその〈群れ〉は、今後も何度となくリスナーを驚かせてくれそうだ。

▼イェテボリ発の重要作品。

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掲載: 2004年10月07日 12:00

更新: 2004年10月07日 18:18

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/出嶌 孝次