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インタビュー

YOUR SONG IS GOOD


 いま東京でいちばん盛り上がってるライヴ・バンドは?と訊かれたら、僕は迷うことなくYOUR SONG IS GOOD(以下、YSIG)の名前を挙げる。オルガン、トロンボーン、ギター×2、ベース、ドラムスという一風変わった編成の6人が汗を散らしながら楽器を奏で、過剰なそのプレイにメンバー同士がいちいち人懐っこい笑顔で反応し合っている姿を観れば、音楽することの悦びっていうのはこういうことなんだ!と実感できるはずだろう。そして、彼らが全身で発するグルーヴを享受すれば……どんな言葉を並べてもかなわないぐらい、とびきりハッピーな気持ちで踊り狂わせてくれる。

 いまでこそカリブ/ファンク/ジャズ/スカ/ソウル/ヒップホップ……と獰猛なぐらいの雑食さをみせている彼らだが、そこに至るまでには長い変遷期間があった。そもそもYSIGはハードコア/クイック・ソウル・バンド=SCHOOL JACKETSがその前身であった。そこからシー&ケイクあたりに影響を受け、ポスト・ロックっぽいサウンドをやっていた時期もあった。

「いま思えば、自分に似合う服がわからなくて、いろいろ手を出しちゃったみたいなね」(ヨシザワマサトモ)。

「メンバーみんながノッて出してる音と、誰かがひとつでも〈?〉って思って出してる音とでは、雲泥の差があるんですよ。長くやってきていま勢いが出てるのは、いろいろ悩んだけど、俺たちはこういうのがやりたいんだって強く思える自信がついたからなのかも」(サイトウジュン)。

 そうして完成した初のフル・アルバム『YOUR SONG IS GOOD』は、いまのYSIGがガッツリとパッケージされた大力作だ。

「2年前に出した『COME ON』は、わざとライヴ感をなくして作ったんですけど、やっぱり違和感があって。逆に今度はライヴ感を出そうって思って最初に作ったのが7インチ・シングルの“Super Soul Meetin'”だった」(タカダヒロユキ)。

「あのシングルでテンションの高い感じをパッケージできたのはポイントでしたね。アッパーなのがどこまでやれるかっていうのは今回のテーマでもある」(サイトウ)。

「やってることはちょっと違うけど、憧れとしてあるのはソウル・ブラザーズの『Calib Soul』。あの響きだったり、いいなぁって思う感じが、いまの自分たちにすごく近い」(ヨシザワ)。

「うん、あの独特のミクスチャー感覚や、採り入れ方のバランス感覚は参考になってる気がしますね。あと、カリブっぽい感じっていうのは、最初からテーマにしてたんです。各自好きな音楽はあるけど、そのなかにある接点みたいな感じで。それにカリブ的な独特なノリってありますよね? たとえば失敗してもいいとか……」(サイトウ)。

 いやいや、その解釈はどうだろう!?

「(笑)まぁ、気持ち的にも余裕な感じがあるなかで、うまくそのなかにみんなの好みが入っていくっていうね。あと、どの曲にもちょっとおもしろい仕掛けを絶対一発は入れないと気が済まないみたいなヘンな空気がバンド内に流れてて。絶対それをやらないとメンバーがニコニコして練習を終えられないみたいな感じもありましたね(笑)」(サイトウ)。

 そう、YSIGの最大の魅力は、そのバンド名にもあるとおり、一発で確実にココロにヒットする楽曲のキャッチーさにある。眩しいくらいに明るいサウンドの奥に、物哀しさも漂わせたメロディーが窺えたり……彼らのライヴでも人気の高い“GOOD-BYE”などはその真骨頂だ。

「泣きながら猛ダッシュするような(笑)。リズムも、カリプソのジャンプ・アップみたいなカーニヴァルっぽい感じというか……号泣してるヤツを神輿に担いじゃったっていうような、そんなイメージがありますね」(サイトウ)。

 泣いて笑って踊って、やっぱり最後は大笑いして……まるでインドの娯楽映画を観たあとのような痛快さと満腹感を、YSIGの音楽は提供してくれる。だけど、しばらく経てばすぐ〈ユアソング、おかわり!〉と叫んでしまう……YSIGは、聴く者を胃拡張にさせてしまう罪作りなバンドだ。

PROFILE

YOUR SONG IS GOOD
サイトウジュン(オルガン)、ヨシザワマサトモ(ギター)、シライシコウジ(ギター)、タカダヒロユキ(ベース)、ハットリヤスヒコ(トロンボーン)、タナカレイジ(ドラム)の6人組。98年の結成当時は初期エモコアに近い音楽性を標榜していたものの、徐々にポスト・ロック的なサウンドに移行。その後さらに音楽性を変化させつつ、2002年に7インチ・シングル“Big Mouth, Big Stomach”を、同年にミニ・アルバム『COME ON』をリリース。さまざまな音楽を吸収したユニークなサウンドが話題を集める。精力的なライヴ活動やクボタタケシのミックスCDに楽曲が収録されたことでさらなる注目を集めるなか、ファースト・アルバム『YOUR SONG IS GOOD』(kakubarhythm)が10月6日にリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年10月07日 12:00

更新: 2004年10月28日 18:06

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/宮内 健