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インタビュー

オーサカ=モノレール

新生オーサカ=モノレールが放つ極上のファンキー・グルーヴを、隅の隅まで召し上がれ!


 オーサカ=モノレールの『THANKFUL(FOR WHAT YOU'VE DONE)』は彼らにとって2年半ぶりのアルバムである。前作『RUMBLE'N STRUGGLE』以降、大幅なメンバー・チェンジを行いながら、SOUL SCREAMやKeycoとのコラボレート、そして韓国でのパフォーマンスを含む精力的なライヴ活動を続けてきた。

「だいぶ変わってきていると思うんです。9人とか10人が一丸となってグルーヴを生み出すっていうのがかっこええんやというのは、ちょっと違うんかなと思い始めて。ブラック・ミュージックって分離しないといけないと。メンバーが半分ぐらい入れ替わったときに、そのコンセプトをみんなに伝えたんですよ。今のほうがドラム、ベース、ギター、ホーン・セクションと、ひとつひとつが独立している感じになっている。リズム感も、それぞれ関係なく弾いていて、4つのリズムが同時に並行して流れていくというか。それはヒップホップもそうだしファンクもそう。いちばん顕著なのがモダン・ジャズで、合ってるのか合ってないのかよくわからないけど、それぞれの楽器がスウィングしている」(中田亮、ヴォーカル/オルガンなど:以下同)。

 ジェイムズ・ブラウンのカヴァー“Mind Power”といった、ヒップホップネタ/レア・グルーヴ・クラシックを取り上げながら、今作で彼らは表面的な派手さを避け、アンサンブルをボディーブロウのようにじわりと効かせてくる。

「ファンクっていうのは〈俺はこれがやりたい〉っていうサウンドだと思うんですよ。ベースの人はこういうキャラだからこういう音を弾いているとか、個人個人の魅力から別の新しさが生まれてくる。オモロイやつが演奏してたら、その人がバンドに合わせようと考えなくても、いいサウンドが出るぞって気付いたっていうかね。個人主義をある程度入れる隙間のある音楽というか。でもチープになにやってもいいとしてしまうと、形も崩れるし、そこはみんながほんまの黒さをもっていないといけない。だからバンド全体としてのギミックやキメがあってそこで展開して、みたいなのはなくなってきて、ビートを刻むことにそれぞれが集中するようなのをめざしている」。

“DOUBLE-UP NOW”の跳ねたリズム、異なる調を同時に走らせる“TWO HOUSES MAKE A HAPPY HOME”、4ビートに挑戦した“SPINNING OFF THE BALANCE”とさまざまなリズムを構造的に解釈し、かつその旨みをエネルギッシュに伝えようとする。音の独立感を保つために、彼らはライヴにおいても、セッティングや音の分離に関して厳格なまでのこだわりを持っているという。

「ジェイムズ・ブラウンもそうですけど、カウント・ベイシーの配置図とか、ドラムのひな壇が何センチとかまで全部決まってるんですよ(笑)。それを僕らは実験的にやるのではなくて、こうあるべきなのではないかって試みている。それがあるからこそ、演奏の自由度がめっちゃある気がするんですよね。曲順変えたり、その場で決めたりするのは昔からやってますけど、最近では違う曲をくっつけたり、途中でベースが違うラインを弾き出して、それで曲が変わってきたりとかね」。

 カット盤をイメージし、アナログ・ジャケットの擦れまで表現した凝りまくりのアートワークも含め、一貫してブラック・ミュージックとその背景にある文化を伝えようとしてきた彼ら。「一番大事なのは、やっててオモロイっていう気持ちがお客さんに伝わるかということだと思う」と根っからの現場主義ファンク伝道集団による最新報告、といったところだろうか。

「続けてきて、ようやく見えてきたような気がしますよね……ブラック・ミュージックをやるうえで、西洋的でないハーモニーを僕らはちゃんと身につけなきゃいけないんじゃないかなって」。――とは決して大言壮語ではないと思う。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年10月14日 17:00

更新: 2004年10月14日 17:07

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/駒井 憲嗣