インタビュー

James Yorkston

2作目『Just Beyond The River』から見えてくる、スコットランドの素朴な風景


「冬の田舎、秋の田舎、春の田舎、そして雨に濡れた街……」。

 スコットランドから登場したシンガー・ソングライター、ジェイムス・ヨークストン。彼のお気に入りの風景は、ざっとそんな具合だ。フランツ・フェルディナンドやクリニックといった個性的なアーティストを輩出するドミノから2002年にデビューし、シーンに静かなインパクトを与えたジェイムス。彼が生まれ育ったのはキングスバーンという小さな村だが、その自然に囲まれた環境は彼の音楽に「大きな影響を与えている」らしい。「本当に懐かしいよ」。

 だからこそ彼のニュー・アルバム『Just Beyond The River』には、雪の美しさや、落ち葉のざわめき、花の香り、そういった風景の断片がハーモニーとなって響いている。

「僕がやりたいのは伝統的な楽器を使った、スロウで気取らない音楽。アコースティックな楽器が上手く演奏されている音楽なんだ」という彼が今回プロデューサーに選んだのは、彼のシングルをミックスしたこともあるフォー・テットことキエラン・ヘブデンだった。

「彼は新作に関して、僕と同じ意見を持っていたんだ。できる限りシンプルなサウンドにしたいってね。彼の家を訪ねて、お互いが好きなレコードをいっしょに聴いた。たとえばマイケル・ハーレイとか。それだけでやりたいことがとてもクリアになったよ」。

 盟友アスリーツとのセッションについては「とりわけ“Hermitage”が素晴らしかった。最初に作った曲なんだけど、声と楽器のサウンドだけに集中して、できる限り手を加えず自然のままに残す、というアルバムのアイデアがこの曲で固まったんだ」と、バンドとの深い信頼関係を語ってくれたりも。キエランやアスリーツとのフレンドリーな交流から生まれた、簡素で、深みがあるトラック。そこにジェイムスのエゴを感じさせない、ナチュラルな歌声が加わることで、彼のめざす「エフェクトで着飾っていないピュアな音楽」が鳴り始める。

「たくさん雨が降った」というウェールズ郊外のスタジオで録音されたこのアルバムからは、その雨のコーラスまでもが聞こえてくるようだ。

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掲載: 2004年11月18日 13:00

更新: 2004年11月18日 17:23

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/村尾 泰郎