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インタビュー

ロボピッチャー

〈今ここにあるはずのないものを歌う〉京都発のSF文系ポップ・ロック!


  くるり、キセルに続く京都発バンドとして、ジワジワと注目を集めているロボピッチャー。加藤隆生(ヴォーカル、ギター)、有田さとこ(ベース、コーラス)、伊藤忠之(キーボード、プログラミング)森崇(ドラム、コーラス)の四人で02年に結成された。

 なんというか、とにかく説明しにくいバンドである。高度なアレンジとバンドならではの起爆力あふれる演奏で、トラッド、ジャズ、昭和歌謡、民族音楽……までを縦横無尽に消化したサウンドは、プログレッシヴなまでにポップで、にぎやかさの中にもポツンとした哀愁を漂わせる。

  「いわゆるロックバンドっぽくはないですよね。ベタな話だけど、みんないろんな音楽聴くし、ルーツも違うし。僕以外はなんか経歴がややこしいバンドなんですよ(笑)。伊藤くんはゲームの音楽とか作ってる人で、ありちゃんは京都町内会バンドのベースやってて。あと森くんは、某メジャーアーティストのバックでたたいてたりとか」(加藤)。

 そんな彼らの〈とらえどころのなさ〉がキャッチーに結実されたのが、この11月21日にリリースされるセカンド・ミニ・アルバム『透明ランナー』。バラエティに富んだ楽曲の中でも、白眉なのが“チンパンジー”。フィッシュマンズを思わせるエクスペリメンタルな浮遊サウンドに〈言葉を喋ったチンパンジー〉と〈君と僕〉の物語が、友部正人ばりのポエトリーで描き出されてゆく。どこか近未来SFを読むような、〈失われたもの〉への郷愁あふれる加藤の詩世界は、ちょっと他にないユニークなものだ。

 「曲は練習の前の日に5分ぐらいでバーッと作る感じで、あんまり憶えてないんです。だからよく『小人さんが作った』って言ってるんですけど(笑)、ずっと後で『こういうことだったんだ』って気付くことが多くて。なんか〈今ここにあるはずのないものを歌ってる〉感じが常にあるんですよ。ジグソーパズルの最後の一片みたいな、絶対あるはずなのになかったもの。そういう欠落感は中学とか高校の時からあって、勉強ってホントにそんな大事なの? みたいなベタなことから、みんな何のために生き延びるの? みたいなことまで(笑)。そんな答えなんて、どこひっくり返してもないんですよね。でも、それを存在させたい。だからロボピッチャーでは同じことをずーっと歌い続けてる気がする」(加藤)。

 ちなみに加藤は、同じ京都のミュージシャン仲間、Limited Express(has gone?)の飯田と、京都在住のシンガーソングライター、ゆーきゃんと共に4年前から京大西部講堂で『ボロフェスタ』なるイベントを主催。ニーハオ!やPONYなど地元のインディーバンドから、小島麻由美、遠藤賢司といったメジャー所までを巻き込んだ、新たな台風の目となるシーンを築きつつある。 

 「もともとは、自分たちが西部講堂に立ちたい!という理由で始まったんですけど(笑)だんだん規模が大きくなっていって。やっぱりシーンを作りたい気持ちはありますね。例えば、浜崎あゆみを頂点とするポップ・シーンがあるとして、僕らはそこからは外れてるけど、こっちはまた別のシーンになればいいなって。
  よく僕が『ロボピッチャーはドポップだ』って言ったら、ロックとポップはどう違うんだ?って言われるんですよ。僕の中ではロックって壁をたたき壊すもので、ポップは壁の中にシューって溶け込んでいって、内側からエイって溶かすものなんです」(加藤)。

 なるほど、とすれば『透明ランナー』はまさしくポップ! 気が付けば、彼らが新たな〈ポップ〉にスリ変わっている日も、実はそう遠くはないかも?

ロボピッチャー 『透明ランナー』
1. ループ(試聴する♪
2. 恋でも恋じゃなくても(試聴する♪
3. キャンディー
4. チンパンジー(試聴する♪
5. 井戸を掘って
6. 世界最速のワルツ

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2004年11月18日 19:00

文/井口 啓子