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インタビュー

SIRENS


「バンドをスタートした時から商業的な成功を収めたいと思っていたわ。1万人クラスのアリーナを埋められるようなグループに、ってね!」。

 こう、あっけらかんと話すのは、「バンドにロック~パンク的なエッジをもたらし、フロント・アクト的な役割をしている」と自認するメンバーのキャリーナ。サイレンズは彼女と、「以前はマイケル・ジャクソン命(笑)で、最近はジェイ・Zとかが好き」だというキャットが結成したグループを母体に、同じニューキャッスルに住む友人同士で結成された。

「UKのガールズ・バンドはレーベルやマネージメントによって寄せ集めて作られたものが多いけど、私たちは違う。まず音が違うし、パフォーマンスだって凄くエナジェティックだし。ただ、TLCとかデスティニーズ・チャイルドのようなUSのグループは目標としてきた。でも、外からの影響はヘンに受けてない。そこが強みね」(キャリーナ)。

 後から加わったのは、「最近はN.E.R.D.がお気に入り」だというリンジーと、「モータウン全般と、最近はアリシア・キーズが好き」と話すレイ。それぞれ個性の違う4人が各々のアイデアを持ち寄って、メロディーや歌詞を作っていくのだという。

「もちろん意見が食い違うこともあるわ。でもお互い妥協しながら作っていく。自分の体験じゃない歌詞だって、頭で理解していればなんとかなるものよ」(キャリーナ)。

 そんな彼女たちの曲を奇抜なポップ・センスでまとめ上げているのが、同郷ニューキャッスルのDJとエンジニアからなるプロデューサー・チーム、DCジョセフだ。

「最初はリミックスを1曲やってもらっただけなんだけど、それがいい仕上がりだったから……バック・トラックを作ったりしているうちに自然に他の曲も出来ていったの。自分たちの方向性を明確に伝えていたから上手くいったわ」(キャット)。

 そして、話題になったのが、本国でのデビュー・シングルとなったN.E.R.D.のカヴァー“Things Are Getting Better”。これがまた、ビートナッツ“Off The Books”の断片を使った何ともユニークな仕上がりなのだ。

「カヴァーというより再構築ね。もともとN.E.R.D.~ネプチューンズの大ファンで、みんなが騒ぎ出す前から好きだったの。ノー・ダウトとかブリトニー・スピアーズとかのプロデュース・ワークも最高だし」(キャリーナ)。

 今回のファースト・アルバム『Control Freaks』では他にも、彼女らのマネージャーのお気に入りだというプリンスの“Right Back Here In My Arms”をカヴァーしていたり、2パックが好きなキャットのアイデアで彼の“Keep Ya Head Up”と同じザップ“Be Alright”をネタ使いした“How I Be”なんて曲もあったりして、全体的にファンクのテイストが強い。これには全員が声を揃えて「イエース!」。で、歌とラップが交錯する感じはUKガラージ的でもあるなと思ったのだが、これには全員が「ノー!」。あくまで他のUKアーティストの追随ではないことを強調する彼女たちだ。そんな意思はアルバム・タイトルにも表れているようで、キャリーナは「私たちをコントロールしたがるような音楽業界の人たちに対して皮肉を込めているわ」と一撃。そして、これからは、むしろ自分たちがコントロールしていくと話しているから頼もしい。

「有名なプロデューサーと仕事をするのではなく、自分たちの仕事を通じて〈次のネプチューンズ〉って言われるようなプロデューサーを送り出したいのよね。コラボレーションにしても、想像もつかない組み合わせで驚かせたいのよ」(キャリーナ)。

 そう話すサイレンズには、本当にありえないことをやってのけそうな気配が漂っている。

PROFILE

サイレンズ
いずれもニューキャッスル出身の、カリーナ、キャット、レイ、リンジーによるヴォーカル・グループ。カリーナとキャットが2001年に結成したグループをもとに、後の2人が加わって現在の編成となる。2003年にキッチンウェアと契約し、N.E.R.D.のカヴァーとなるシングル“Things Are Getting Better”でデビュー。同曲は本国UKでクラブ・ヒットを果たし、日本でも12インチ・シングルが話題となった。2004年に入ってリリースされたセカンド・シングル“Baby(Off The Wall)”もヒットを記録し、〈オール・セインツの再来〉として各メディアの絶賛を浴びる。このたび、ファースト・アルバム『Control Freaks』(Kitchenware/ビクター)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年12月02日 18:00

ソース: 『bounce』 260号(2004/11/25)

文/林 剛