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インタビュー

L.L BROTHERS


 L.L BROTHERSと聞いて〈あのダンサー兄弟か〉と思ったあなた。確かに、90年代初頭の彼らはダンス・シーンを熱くさせてくれたし、いまなお彼らのダンス・テクに翳りは見られない。それでも、L.Lはもはや〈ダンサー〉ではなく〈R&Bデュオ〉だという認識を持つべきだ。2000年にバウンシーな超絶曲“Bumpin' Freakin'”がドロップされた瞬間から、R&Bファンの間ではシーンの最高峰として注目を集めているのだから。

 残念なことに、もしその傑作を聴き逃していたとしても、EXILEの“New Jack Swing”は耳にしたことがあるのではないだろうか。同曲の作詞作曲や仮歌を担当していたのは、何を隠そう、ニュー・ジャック・スウィングに多大な影響を受けてシンガーをめざしたというL.L兄弟なのである。

「〈メロディーと歌詞をやってよ〉って言われて。トラック聴いたらもろにニュー・ジャックで、聴いた瞬間メロディーがバンバン浮かんできましたよ」(Masaya)。

 ファミリーと言っても過言ではないプロデューサーのT.Kuraと共に制作参加したこの曲は、とても裏方とは思えないほどL.Lのカラーが全開だった。そんな彼らが、今回メジャーから仕切り直しのニュー・アルバム『BACK AGAIN』をリリースすることになったのだが、これが期待を裏切らない本格R&B。USで流行中の〈クランク&B〉を思いきり匂わせたタイトルの序曲“GET IT CRUNK”で幕を開け、続く“BACK AGAIN”“BIG BUTT, G-CUP”もモロに南部テイスト炸裂のクランク・チューンだ。

「ぼくたちが感動したものを(リスナーにも)味わってほしいってことが原動力。本場でいま流行ってる格好いいって思ったものを、素直にぼくたちの身体を通して、〈じゃあ日本では〉って吐き出していきたいんですよ。〈日本のR&B〉にはしたくないんです。本場のヒップホップとかR&Bをいかに格好良く表現できるかってところが勝負」(Takanori)。

「いまならこの音楽をやらなきゃダメだろうって。“THE PARTY”はウェッサイがキテる頃に作ってた曲で、いまならサウスじゃなきゃヤバイってリメイクしたんですよ」(Masaya)。

 L.Lの本場志向は他の追随を許さない。彼ら自身「日本向けにわかりやすくした部分もある」というように、確かにリリックのエロ度が控えめだったりはするものの、サウンドや歌唱スタイル自体は完全に現在進行形のUSにシンクロしている。そして何より驚くのが、彼らは歌だけでなくトラック制作も手掛けているという点。たとえば、今回リード・シングルになったテディ・ライリーばりの“THAT'S MY LIFE”のトラックは兄Takanoriの作。アルバムの半数以上の曲は自作/セルフ・プロデュースだ。しかもである。そもそも、トラック作りを始めたのは、手元に届くものの出来に納得できず、仕方なく、だというから驚きだ。

「踊りも誰かに習ったんじゃなくて、ほんの一瞬ビデオに映ったものを〈あれどうやってるんだろ?〉ってところから覚えていったんだけど、曲もそれと同じです。ぼくは基本的に楽器ができないから、トラック作るときは耳であれかなこれかなって探して。Masayaはオルガンを習ってたんで、コードが欲しい時には〈Masayaちょっと来て〉ってね」(Takanori)。

 見様見真似で始めた制作が、専業プロデューサー顔負け(本当です)の域に達している彼らだが、実はスタジオ・ワークはあまり好きではないと語る。

「ぼくらはライヴでどう使うかってことのほうを重視してて。根っからの制作好きじゃなくて、本当はパフォーマンスが好きなんです。だから、いいパフォーマンスのためにどんなサウンドを用意するのか、っていう考え方かな」(Takanori)。

“THAT'S MY LIFE”のプロモ・クリップでハード・エッジなダンスを披露している彼らを観れば、この言葉はすんなりと理解できるはず。ダンスを含めたパフォーマンス。L.Lは本場と同レヴェルのエンターテイメントを見せてくれる。

PROFILE

L.L BROTHERS
久留米出身の兄弟デュオ。TV番組の企画〈ダンス甲子園〉に出演してダンス・アイドルとして人気を博し、91年に“L.L BROTHERSのテーマ”でデビュー。数作品をリリースするものの、やがて芸能活動を休止してクラブでのパフォーマンスやトラック制作を開始。2000年にT.Kuraプロデュースによるシングル“Bumpin' Freakin'”で再デビュー。同年のミニ・アルバム『Next Level』と共に高評価を集める。以降も“Marry me”“Put your hands up!”とシングル・リリースを重ね、一方でMICHICO、EXILEなどの作品では制作にも携わり、〈VOICE OF LOVE〉プロジェクトにも参加するなど活動の幅を拡げていく。このたびニュー・アルバム『BACK AGAIN』(ソニー)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年12月02日 18:00

ソース: 『bounce』 260号(2004/11/25)

文/荘 治虫