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インタビュー

Limited Express(Has Gone?)


左から、YUKARI、奈良崎幸司、飯田仁一郎

  2003年にジョン・ゾーンの主催するレーベル、米TZADIKからアルバムをリリース。国内でも一躍注目を集める存在となった京都の三人組、Limited Express(has gone?)。

 実をいえば、私自身の彼らに対する想いは、当初フクザツなものだった。パンキッシュでありながら、独特のグルーヴを感じさせるLO-FIハードコア・サウンドは、明らかに初期ボアダムスやメルトバナナを彷彿させるもので、それを何のてらいもなくやってる点には〈新しさ〉をヒシヒシ感じたものの、どこかイメージが先走ってる感もあって、自分の中でどう位置づけたらいいか正直よくわからなかったのだ。

  それだけに、彼らのニューアルバム『Makes You Dance!』を聴いて、驚いた。あいかわらず、奇妙なリフが次々に飛び出す変則ぶりながら、聴き心地はあくまでポップでメロディアスで。恐るべきことに、すべての曲が“3分間ポップス”として成立している。

 「確かに、いわゆるボア以降みたいなアンダーグラウンドな感じは自分たちの中で脱却してきたのかなと思いますね。結成して2年ぐらいはまだ18とか19歳で、ライヴハウスにライヴを見に行ったらワケわからんバンドがいっぱいやってて、一方では同じサークルにくるりがいて……みたいな感じで、その2年間で吸収したものをイッキに出してた感じで」(飯田仁一郎、ギター/ヴォーカル)。

 「わからんからできたんでしょうね。コレが好きっていうのも特になくて、コードも何も知らないから、とりあえずやるってところから始まって。自然と〈こねくりまわすことがLimited〉みたいな感じになってて、今思えばミクロなとこを追いかけてた気もするんです。それが今回、別に複雑なビートを入れなくても、Limitedっぽさが出せるんだなって」(YUKARI、ベース/ヴォーカル)。

  「だから、TZADIKの時の方が難しいこともいっぱいしてて、いい作品だと思うけど、自分でも最後まで聴くのはしんどかった(笑)。今回はいい意味で重すぎない、何回も聴ける音源が作れたなって」(飯田)。

 ちなみに本作は音楽評論家で、さかなのプロデューサーとしても知られる高橋健太郎氏のレーベルからのリリース。高橋氏が半数以上のリミックスを手掛けている。これまでの彼らになかったレゲエやエレクトロニカのリズムの曲は、彼がもたらしたものも大きいのだろう。その他リミックスには、福岡の盟友folk enoughが参加。ちょっとジャンクで乾いた音色が、アルバム全体にイイ具合にルーズな空気をもたらしている。とはいえ、Limitedというバンドの起爆剤は、やはり他でもないメンバー自身だ。

 「Limitedの曲作りって、だいたいギターとベースのフレーズが絡んだ瞬間からスタートするんですよ」(飯田)。

  「ブルースコードの展開とか知らないから、いわゆるジャムはできないんですけど、例えば誰かが一小節とかのフレーズを持ってきて、それに合わせて音を出した時に、何回かに一回は三人とも〈あっ!〉って思う瞬間があって。そしたらもうヤメられなくて、曲が始まっていく。ケンカもめっちゃしますけどね。ダッサイでそれー!って(笑)。たぶんJinichirouくんとコウちゃんは、フレーズに対してイメージを広げてるんやろうけど、ユカリはあんまり考えるとできんくなるから。とりあえず、思いついたことをやってみる感じで」(YUKARI)。

 「実はそこがむっちゃデカイと思うんですよ。女の子のやる音楽って、僕らには絶対出せない直感なり、刺激なりがあって。それは絶対的に信頼してるし、そういう三人が混ざるからこそ、Limitedの曲はドラマチックなんです」(飯田)。

 ここ数年はハーフジャパニーズ、フォーク・インプロージョン、イーノン、ディアフーフなど、海外のミュージシャンの来日公演を多数サポート。昨年はUSA、オーストラリア・ニュージーランドツアーを敢行するなど、持ち前のDIY精神で国境を飛び越えて活動している。

 「TZADIKが決まった時から、日本という土壌は消えましたね。京都はたんに住んでる場所って感じで。ちょっと前はシーンを作れたらとも思ってたけど、やっぱりそれだけでは物足りなくなるんです。他にもいいなって思う人がいると、そいつらとやることが楽しくなって……。結局、そういう流れの中でLimitedは成長してきたから」(飯田)。

 そんなバンドの歩み自体が、なんともエキサイティング。2月にはサンフランシスコからナンバーズを招いてのツアーも決定。こちらも期待!

『MAKES YOU DANCE』
1.手放し操法(Free style Riding)(試聴する♪
2.ひかるみらい(TWINCLE STAR)
3.Talk to me, all right(試聴する♪
4.スイヘイセン(SUIHEISEN)
5.Tiger Rock(試聴する♪
6.Sweet music on the beach
7.Go! Girl! Goal!
8.ベネズエラ・フィーバー(Venezuela Fever)
9.ホビーホビー(Hoby Hoby)
10.ロリリロリル(RoliliRolil)
11.>ジェットストリームアタック(>jet stream attack)
12.HOPPING
13.ABCDEFence

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2005年01月20日 20:00

文/井口 啓子