インタビュー

ANATAKIKOU

シンプルながら、一聴瞭然の良質ポップスを発してきた彼らのフル・アルバムが到着!!


 距離を意味する〈あなた〉という言葉を漢字変換してみると出てくる〈貴方〉と〈彼方〉。あれ、遠いのか近いのか、よくわからない……。しかし、国語のテストではマズいのかもしれないけど、それが音楽の世界であれば、〈貴方〉と〈彼方〉の狭間のエアポケットが想像力を刺激してくれる。そんな素敵な言葉をバンド名に戴いた関西の3人組バンド、ANATAKIKOUは現実と想像を行ったり来たりしながら、聴き手に大切な何かを残すファースト・アルバム『sweet montage A』をリリースする。

「もともと、このバンドは企画バンドやったんですよ。だから、長く続くとは思ってなかったし、ベースを入れないまま、ここまで来てしまった」(藤井寿光、ドラムス)。

 The Miceteethの森寺啓介とバンドをやっていたこともある顔見知りの3人が、3年前に企画的に結成し、気付いたら今に至っていたという緩やかな経緯とは裏腹に、彼らの音楽はツイン・ヴォーカル/ツイン・ギターとドラムス、そしてサポートのベースという編成を駆使した詞曲演奏ともに、実に巧妙かつ緻密だ。

「結局ね、このバンドでできることしかしたくないんです。今って、何でもできるし、下手にそれらしいことができる。でも、そういうのって、むちゃ恥ずかしいと思うんです。だから、例えば、頭の中でストリングスが鳴ってたりしていても、それを敢えてコーラスに変換するっていう。まぁ、初期のビートルズ的な発想に近いとも思うんですけど、そういう変換がねじれて聞こえる要因なのかもしれないですね」(松浦正樹、ヴォーカル/ギター)。

 膨らんだ曲のイメージを3人に凝縮していればこそ、シンプルな音数が線の太いポップスを描きつつ、それが緻密に錯綜してゆく彼ら独特の世界が眼前に表れる。しかも、彼らは2人のヴォーカル/ギター、北條(真規)と松浦の2人がソングライティングを担当。共通の空気感を共有しながらも、個性の異なる2人の詞曲も彼らの音楽に深みを与えている。

「僕の歌とか声はアクが強いと言われがちなんですけど、松浦の歌はロックというかポップスというか、そんな感じではあっても、あまり聴いたことのない切り口の歌を書いて、いい声で歌うなぁと思います」(北條)。

 そんな話を和やかにしつつ、何処かに寄りかかった発言をせず、彼らがめざすのは……。

「自分たちが住んでる大阪の影響は出てない感じがします。他のバンドともあまり交流がないし、むしろ、遠く離れたことを思って、曲を書いたりすることが多いです。例えば、遠く離れたところに住んでいる好きな人のこととか、〈遠い〉とか〈離れてる〉ってことはキーワードかもしれない」(松浦)。

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掲載: 2005年01月20日 13:00

更新: 2005年01月20日 18:18

ソース: 『bounce』 261号(2004/12/25)

文/小野田 雄