インタビュー

ORANGENOISE SHORTCUT

タイムレスなメロディーで日本のギター・ポップを更新する注目デュオ


左から、杉田藤孝、杉本清隆

  作品をリリースするたびに@TOWER.JPのインディーズ・チャートで1位を奪取し、昨年1月にリリースされたタワレコ限定シングル“Number 5”も即完売。さらに先頃リリースされたばかりのエイプリルズとのスプリット・シングルも話題を呼んでいるユニット、orangenoise shortcut。日本のインディー・ギター・ポップ界を10年ぶりに賑わせている……という言い方は大袈裟だが、彼らの新作『Landscape』を聴くと、〈かつての東京から発信されていた音楽〉をひねらずに自然体で今に再生させようとしている姿が見えてくる。それは確かに無邪気なものなのかもしれないが、見方を変えれば好きな音楽に対する純粋な敬意の表明とも言えるはずだ。彼らのカラフルでスウィートな楽曲に込められた〈わかりやすさ〉はソングライター杉本清隆の「かなりの紆余曲折を経た」バックグラウンドが影響しているのではないだろうか。

  「高校の友達がビートマニアっていうゲームの開発チームにいたんです。そこで音楽製作の面でいろいろ手伝っていたら社員になっちゃって。最終的には曲のディレクションを任されるような立場にまでいったんですけど、ゲーム音楽はゲーム音楽としてしか消費されないじゃないですか。それが悔しくて。じゃあ、自分でやってみようかなと。やめた後でおいしい仕事をやっていたことがわかったんですけど(笑)」(杉本清隆、ヴォーカル、キーボード他)。

杉本のソロ・ユニットとして活動してきたorangenoise shortcutだが、新作からはベーシストの杉田藤孝を正式メンバーとして迎えた体制での活動となる。

「これまでもずっとライヴとレコーディングでサポートはしてきたし、ほぼメンバーみたいなものだったんです。俺が入ったことによってアルバムが大きく変わったわけではないんですけど、バンマスみたいな感じで精神的な部分でバンドをカバーしていけたらいいんじゃないかと思っています」(杉田藤孝、ベース)。

  「杉本清隆=orangenoise shortcutというわけじゃなくて、バンドを想定したユニット名だったのでずっとバンドにしようということは考えてはいたんです。僕らの世代で似たような音楽に影響された人たちは、〈お約束〉みたいなものがあるんですよね。だから、(杉田の加入で)全然違うエッセンスを取り入れることができそうだと思って」(杉本)。

アルバム『Landscape』を聴きこんで驚かされるのは、各曲のバラエティの広さや、トリッキーな曲の構造をさらっと聴かせるバランス感覚だ。その点について訊いてみると…。

「やりたいことが一杯あるんです。一つの方向には定まらないアルバムを作りたいという気持ちがあって、実際にやってみたらこうなったというか(笑)。今はテクノロジーが発達して理想に近い状態になってきたと思うんですよ。それが当たり前になった時代だからこそ、テクノロジーを使って人間にしか出せない味を表現していきたいですね。あと、僕のヴォーカルはすごい細いので、ファンシーなものとして捉えられちゃうこともあるんです。そういうことをやりたいわけじゃないという主張をちゃんと音楽でしたいという気持ちも入っているのかもしれません」(杉本)。

  彼らは、昨年2月に2枚同時リリースされ話題となったフリッパーズ・ギターのトリビュート・アルバムに参加している。今なお〈渋谷系〉というタームで語られることも多い彼らだが、そのことに関して本人はどう思っているのだろうか?

「僕はリスナーとして渋谷系がジャストな世代なんですよ。音楽を作るきっかけとなったのがピチカート・ファイヴなので。自分たちがそう言われることに関しては否定はしていないんですけど、渋谷系自体は自分の中ではもう過去のものですから」(杉本)。

「フリッパーズ・ギターというバンドの存在も知らなかったんですよ。(杉本の)車に乗せてもらったときにカーステで聴いて、『オザケンみたいだね』って言ったことがあるんですけど(笑)」(杉田)。

orangenoise shortcut『Landscape』
1. Winter cheek 35 (試聴する♪
2. Melt into the sky (試聴する♪
3. Shining Star
4. 都会の色
5. 街道 (試聴する♪
6. 雨降り
7. 真冬フリーダム (試聴する♪
8. Sunday Rocker
9. 臨時列車は不定期で (試聴する♪
10. 空中モニター

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2005年02月10日 14:00

更新: 2005年02月10日 18:42

文/ヤング係長