インタビュー

SOIL & “PIMP" SESSIONS


 なんやかんやが飛び散りまくってムンムン。SOIL&“PIMP”SESSIONSのファースト・フル・アルバム『PIMP MASTER』は期待どおりの仕上がりで、お熱いのがお好きな人たちには堪らない一発である。また、男臭いことこのうえなく、〈ソレ系〉の選手権があれば、ぶっちぎり間違いなし。「こんなウサン臭い……言葉間違えました、濃いキャラクターの6人が揃って音出してるので、そりゃもう男汁は全開ですよ」と社長。あなたの手元にもあるはずのファースト・ミニ・アルバム『PIMPIN'』もライヴの勢いをうまく収納させた盤だったが、より映像的な方向へ、そしてより多彩な世界構築をめざした本作を聴けば、まず〈いろんな山を乗り越えてきたな〉という思いが立つのだった。

「スタジオ・ワークにライヴ的な熱さをどれだけ込められるか、これはこれからもずっとテーマにしていくでしょう。ただ、ライヴの時とは違ったライヴ感を必要とするのがレコーディングで、より大胆な音の入れ込み方をしないと求めてるものにはならない」(社長)。

「ただ音が大きいだけでは駄目で、ダイナミックかつふくよかな良い音を鳴らすための工夫はしました。〈聴かせる音〉を作るのはより慎重になりますよね」(ミドリン)。

 針でちょっと突いたら、パンッ!と破裂しそうなほどサウンドが膨張してて、放たれる熱気に巻き込まれて目を回すSOIL的体験のおもしろさがめいっぱい味わえる。パンクなアティテュードとハードボイルドなスピリットにビートニクなセンスを混ぜ合わせた彼らの世界。それを的確な形で記録するために彼らは日々努力を重ねてきたわけで、充実した成果をここに披露している。

「俺たちの凶暴なところはこれまでと変わらずなんだけども、今回はもっと深いところに行ってますね。よりラウドに、より切なく。さまざまなカラーの楽曲も揃ってるし」(タブゾンビ)。

「レコーディングって発見の場なんですよね。記録するにあたって自分がいったいどういう音を求めているのか、俺が思う〈らしさ〉って何なのかを探ることになるわけですよ」(元晴)。     

 なるほど、鍛練のなかで自分らしさ、またバンドらしさを掴み取っているのだと。ということで、自分たちではSOILをどんなバンドと見ているのか訊いてみた。

「ライヴですべてを燃焼する奴ら。発散する汗の量なら誰にも負けないんじゃないかと。とにかくリアルな音を出してる6人です。僕は言葉で勝負してますけど、みんな楽器を使って喋ってますからね、口で喋る以上にリアルなんですよ。その一つ一つの音から、〈あれ、なんかあったのかな?〉って感じたり、〈今日はカッコイイこと言ってるねぇ!〉って思ったり」(社長)。       

 番格ジャズ──そんなフレーズを今思いついた。この攻撃的というか好戦的というか、音の佇まいが実に頼もしいわけなんだが。

「でも、あんまり勝ち負けにはこだわってないんですけどね(笑)。俺は俺って感じでやってますから」(タブゾンビ)。

「ま、強いて言えば、昨日の自分には負けたくないと」(元晴)。

「いい言葉だねぇ! そう、自分に負けたくないんです!」(タブゾンビ)。

 うん、負けてねぇと思う。どれだけリアルに今の自分を描き切るかってことに賭けて、ばっちり勝利をもぎ取ってる。たぶん収録曲はライヴを重ねることによってさらに表情を変化させていくであろう、そんな予兆が含まれているところも頼もしい。アルバムだってある意味、生物。今この瞬間、この音を聴き逃すとあんた、ちょっと切ないことになるぜ、って呟きが俺には聞こえた。とりあえず早いとこ一発お見舞いされてみろ!

PROFILE

SOIL&“PIMP”SESSIONS
2001年結成。タブゾンビ(トランペット)、社長(アジテーター)、元晴(サックス)、丈青(ピアノ/キーボード)、ミドリン(ドラムス)、秋田ゴールドマン(ベース)からなる6人組ジャズ・バンド。ライヴを中心に活動をスタートし、2003年には音源のリリース前にも関わらず〈フジロック〉に出演。さらなる話題を呼ぶなか、2004年6月にデビュー・ミニ・アルバム『PIMPIN'』を発表。その後も〈朝霧JAM〉〈SUN SET LIVE〉などの夏フェスにおいてダイナミックなパフォーマンスを披露して観衆を圧倒する。このたび、昨年12月に発表されたシングル“Suffocation”も収録されたファースト・フル・アルバム『PIMP MASTER』(ビクター)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年03月17日 13:00

更新: 2005年03月17日 18:54

ソース: 『bounce』 262号(2005/2/25)

文/桑原 シロー