インタビュー

Beck

名作『Odelay』を彷彿とさせる、もっともベックらしい快心作『Guero』が登場!!


『Guero』──ヘンテコなアルバム・タイトルだ。でもこのヘンテコな感じが、ベックのユニークな個性と、雑多な文化を吸収したバックグラウンド、それから今作のオリジナリティーを実に上手く言い表して
いる。

「スペイン語のスラングで〈ホワイト・ボーイ〉っていう意味なんだよ。僕はロサンゼルスの東側にある街で育ったんだけど、メキシカンとセントラル・アメリカンばかりが住んでるところでさ、よく通りで〈ヘイ、グエロ!〉って声を掛けられてたんだ」。

 アメリカなのにメキシコにトリップしてしまったかのような気になるその街の空気とストリートの音は、タイトルの元になった収録曲“Qu? Onda Guero”に封じ込められている。マリアッチが聴こえてくるような街でブルースに傾倒し、アコースティック・ギターを片手に音楽を始めたベック少年は、やがてフォーク・ソングにサンプリングのサウンドやヒップホップのビートを絡ませ、ノイズも加えて斬新な音楽を創り出す。そのトレードマーク的サウンドを明確に打ち出したのが、90年代を代表する名作『Odelay』だった。その『Odelay』のプロデュースを手掛けたダスト・ブラザーズとふたたび組んだ今回の『Guero』は、当時の遊び/実験心をそのままに、ビートを活かして余計なサウンドやノイズは極力省き、シンプルにすることで曲の力を倍増させた作品だ。それはとても自然体で、どこにも余計な力を感じさせないという意味で、過去最高にベックらしい作品に仕上がっている。しかもビートの高揚感が直に身体に影響するだけでなく、すべてのメロディーが頭に留まり、聴き終えたあと胸に不思議な余韻が残る。いっしょに踊れる楽しい音楽はいくらでも存在するが、ベックは身体と心の双方に絶妙なバランスで作用する音楽をこの『Guero』で達成したのだ。

「すごくシンプルで思わず身体が動いちゃうような、楽しいアルバムが作りたかったんだ。でも同時に、深みがあって感情とも結びついているものにしたかった。どちらかに偏らないようにするのはちょっとした挑戦だったな」。

 楽しさはお墨付き。感じる余情は人それぞれだろうが、きっと素敵な心の旅が体験できることと思う。
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掲載: 2005年03月31日 15:00

更新: 2005年04月07日 20:07

ソース: 『bounce』 263号(2005/3/25)

文/鈴木 美穂