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インタビュー

エレクトリックギュインズ

恋するキモチがギュイ~ンと詰まった、関西発・異能ポップ・バンドのニュー・アルバム! 


 エレクトリックギュインズの新作『恋するギュインズ』にハートを鷲掴みにされてしまった。60~70年代のソフト・ロック、ウェストコースト・ロックからプログレを通過して現代のJ-Popに辿り着いたような彼らのサウンドは、純度の高い歌モノとしててらいなく、健やかなメロディーとハーモニーを脈立たせ、春の白昼夢のようなポップ・ワールドを現出させる。前作『幻惑デイズ』リリース以降、加速度的な活動と注目を集めてきた彼らのなかの新たなアプローチは、決してひねりやストレンジな方向だけではなかった。

「『幻惑デイズ』あたりから、自分たちのとっ散らかった音楽性のなかで一体何がみんなに受け入れやすく、理解されるのだろうかと。それで僕たちの音楽のなかでもっとも重要なのは、月並みですがやっぱり、〈ことば〉と〈メロディー〉なんだろうなと。今回はそこに着眼して、180°くらいある自分たちの音楽性を60°くらいに寄り目集中して制作した感じです」(前田栄達、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 彼らが内包する幅広い音楽性のなかでも、「周りにあるイガイガとした〈なにか〉を静電気除去シートで取っ払ったような」とみずから形容する秀逸なメロディーラインが際立つ。奥田民生チックなペーソスや重層的な詞の世界を、骨太なアンサンブルでビルドアップするバンドのポテンシャルに瞠目し、そして人と人がすれ違うときの衣擦れのような機微にうっとりする。

「たとえるなら、見知らぬ男女が満員電車でいきなり身体を寄り添ってる感じ。よく行くコンビニの女店員と一言も口を交わすことなく続くお互いを意識する気持ち。どんな状況でも、お互いの意識が〈不思議〉でも〈懐かしい〉でも〈好意〉でもなにか触れ合うことがあれば、それは総じて〈恋〉ってもんでいいんじゃないんでしょうかね」。

 ここ数か月で立て続けに印象に残る作品をリリースした盟友ANATAKIKOUとリトルハヤタのメンバーが参加し、気鋭のデザイン集団、絡繰堂がイマジナリーなアートワークを手掛けるなど、さながら関西異能ポップ集団揃い踏みのマスターピース。美しく、儚く恋のワンシーンを切り取った本作は、春のちょっと暖まった空気のなかを軽やかにそよいでいる。

「とある外国の著名なピアニストが死ぬ直前の枕元に、夏目漱石の〈草枕〉のボロボロになった単行本が置いてあったという話を聞いたことがあります。多くの人にそう思ってもらえる作品であればこんなに嬉しいことはないと思ってます。とはいえ、車で春風を受けながら大音量で聴いてください(笑)」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年04月14日 12:00

更新: 2005年04月14日 18:52

ソース: 『bounce』 263号(2005/3/25)

文/駒井 憲嗣