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インタビュー

ENGINEERS

普遍と革新の狭間で絶妙なバランス感覚を見せるバンド、エンジニアズが見参!!


「いま僕はブライトンのネット・カフェにいて、外には降り積もる雪と灰色の空と桟橋が見える。こんな寒い所で震えていないで、日本にいれたらどんなに良いか、と思っている」(スウィニー、ドラムス:以下同)。

 このインタヴューはEメールを通じて行われた。〈シューゲイザーの進化系〉として現在UKでもっとも注目を集めているバンドであるにも関わらず、アーティストぶった気取りが一切なく、まるで友達のような親近感が溢れまくりである。ところが、みずからのサウンドに関しては、「曲作りは必死だし、音質にはもの凄く注意を払っている。僕らは音楽についての妥協はしないんだ」と、完璧なプロフェッショナルに徹しているのだ。そこにエンジニアズの大きな魅力がある。そして彼らのそうした二面性は、リリースされたばかりのデビュー・アルバム『Engineers』において、親しみやすく美しいメロディー+サイケデリックな実験精神、という形で確実に楽曲へと反映されているのだ。そうした意味では、彼らのルーツも実に興味深い。従来のポップ感とスピリチュアルな先進性との融合を試みていた70年代初期のビーチ・ボーイズとの近似性を指摘すると「そら来た! まさに僕らの絶対的ルーツさ! 実はちょうど“Feel Flow”(アルバム『Surf's Up』に収録)をカヴァーしようと考えていたんだ」と大肯定。

「ブライアン・イーノも全員が大好きなんだけど、メンバーによって考えが違うんだ。たとえばサイモン(・フィップス、ヴォーカル)に尋ねれば、ロキシー・ミュージックの“Virginia Plane”のシンセ・ソロを挙げるはずさ」。

 イーノはロキシー・ミュージックでの活動を皮切りに、ポップとアヴァンギャルドの両端を往来するようにキャリアを積んできた異才。こうしたポップスの境界線上の音楽を模索してきた先人たちからの影響が、彼らを単に〈曲がイイだけのバンド〉以上の存在に押し上げているのは間違いなさそうだ。続けて、彼らにとって重要なキーワードであるはずの〈サイケデリック〉について訊いてみれば、「サイケ? 僕はいつもペイズリー柄のシャツを思い出すなぁ」などと、まるで近所の中学生のような前置きをしつつも、「僕らの音楽は、良いことも悪いことも天上から見下ろせる場所へと誘うんだ」と、エンジニアズ・サウンドのサイケ感をジャストに表現してくれた。ああ、彼らはやっぱり本気のプロフェッショナルだ!
▼文中に登場するバンドの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年04月21日 12:00

更新: 2005年04月21日 17:08

ソース: 『bounce』 263号(2005/3/25)

文/北爪 啓之