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インタビュー

Maximo Park


 ここ数年、快進撃を続けるUKのロック・シーン。その輝けるリストに新たに太文字で名前を書き込んだのがマキシモ・パークだ。〈1枚のシングルが運命を変えた!〉なんて、お決まりのサクセス・ストーリーも当然バイオグラフィーには書き込まれているが、その〈運命の女神〉となったのがワープとくれば、バンドのユニークなスタンスに気付かされるだろう。

 「最初にメールを貰った時は驚きだったよ、〈あのワープが!?〉って感じで。でも、エイフェックス・ツインとか、ワープの音は以前から聴いてたんだ。すごくいいレコードを出すレーベルだしね。だから、ワープからリリースすることで、もっと自由な表現ができるんじゃないかって思ったんだ」(ポール・スミス)。

 そのきっかけとなった自主制作盤の7インチEP“Graffiti”は、記念すべきデビュー・アルバム『A Certain Trigger』に新ミックスで収録されたが、アルバムに収録されたナンバーはどれも複雑なコードとポップなメロディーがぶつかって生まれたビッグバンのような輝きを持っている。そこにトリッキーな色合いを添えるキーボードの存在感から、初期XTCやジョイ・ディヴィジョンあたりを引き合いに出される彼らだが、もちろんそれはエッセンスのひとつに過ぎない。

「なにしろロックの始まりから50年分の音楽を聴いてきてるからね、ニューウェイヴもインスパイアされたもののひとつなのは確かだよ。とりわけ今までの流れとは違ったものを生み出そうとする姿勢は、僕らと共通していると思う」(ポール)。

「あまり音楽的な方向とかは考えないで、常に自分のなかから自然に出てきたものを、そのまま表現していくのが僕らのスタイルなのさ。5人それぞれのアイデアが、ケミストリーで自然にひとつになっていくんだ。たとえば僕が曲を書き、ポールが歌詞を付けて、トム(・イングリッシュ)がリズムを付けるみたいにね」(ダンカン・ロイド)。

 音楽性も趣味もバラバラな5人のメンバーがそれぞれにアイデアを出し合い、表情豊かなナンバーが生まれていく。その世界観を統一させるのは、すべての歌詞を担当しているポールの〈言葉〉だ。ステージでは本を片手にシャウトしてみせるポールは、文学への愛情を隠そうとはしない。

「あれは本というより、昔から書き込んでいるノートなんだ、歌詞を忘れないようにね(笑)。でも、(本を持つのは)ひとつのシンボリックなパフォーマンスでもある。僕は昔から本を読むのが大好きなんだ。だけど、ロック・ミュージシャンってそういうことを隠したがるんだよね。僕はそれを自分の個性として主張したかった」(ポール)。

 その詩的な歌詞が評価されて、本国UKではスミスに連なる〈ポエット・パンク〉とも称されている彼ら。バンド名はキューバに実在する公園をもとにしたらしいが、「そこは人々が平等に政治的な意見を議論する民主的な場所なんだ。僕たちもそんなふうに、自分たちの意見やアイデアを自由に交わせるバンドを作りたかった」(ダンカン)。そんな理想主義が彼らのロック革命を支えている。そして、その根底に流れるのは清々しいまでのロックへの情熱であり、それがマキシモ・パークのすべてなのだ。

「僕らが作っているのはすごくシンプルなもの。そうじゃないと肝心なものを失ってしまうからね」(ダンカン)。

PROFILE

マキシモ・パーク
ダンカン・ロイド(ギター)、アーチス・ティク(ベース)、カス・ウーラー(キーボード)、トム・イングリッシュ(ドラムス)によってニューキャッスルで結成。ダンカンやアーチスがヴォーカルをとる形でライヴ活動を開始する。2003年にポール・スミス(ヴォーカル)が加わって現在の5人編成となる。2004年に自主制作で限定リリースした7インチEP“Graffiti”がワープのスティーヴ・ベケットの目に留まり契約。ワープ初のギター・バンドとして注目を集めるなか、今年2月にシングル“Apply Some Pressure”でデビュー。同曲はUKナショナル・チャート20位をマークする。このたびファースト・アルバム『A Certain Trigger』(Warp/BEAT)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年04月28日 16:00

更新: 2005年04月28日 16:31

ソース: 『bounce』 264号(2005/4/25)

文/村尾 泰郎