the band apart
作品リリースのマイペースさゆえに、昨年12月のシングル『RECOGNIZE ep』から、新作アルバム登場はまだ先かと思っていたのだが、前作『K. AND HIS BIKE』より1年8か月ぶりとなるthe band apartのセカンド・アルバム『quake and brook』が早くも完成した。
「大体、1か月くらいでまとめた感じですね。まぁ、でも、今回はたまたまなんじゃないですか(笑)」(原昌和)。
「調子が良かった? いや~、みんなで話し合った結果、〈アルバム出したいね〉ってことになったんで、〈じゃあ、やろう!〉っていうノリで」(荒井岳史)。
前作のリリース直後に自身のレーベル=asian gothicを設立。米国のバンド、モック・オレンジのアルバムを発表すると共に、SPARTA LOCALSや54-71、bloodthirsty butchersらを招いた自主イヴェント〈smooth like butter〉や音楽フェスなどで精力的にライヴを行ってきた彼ら。ブリージンなフュージョン感覚を音速で走らせる“coral reef”で幕を開ける本作は、ジャズ/フュージョン、ディスコをはじめとするダンス・ミュージックのさまざまな音楽性を高度に、そして高速で編み上げて、ロック的なダイナミズムをもってそれらを叩き付ける音楽性自体に大きな変化はない。しかし、レーベル運営者としての自覚やライヴ経験がそうさせたのか、作品の密度や表現の幅、そして完成度という点で、前作を軽く凌駕している。
「作り方は、曲のネタを持ってきた人のイメージを大切にして作り込むパターン、それから“higher”の時みたいに、早い段階でみんなに振って、わーって作っちゃうパターン。すごく大雑把に言うと、そんな感じですかね」(荒井)。
変拍子やギターの速弾きを織り込み、緩急を付けながら、プログレッシヴな曲展開を見せる“from resonance”や“M.I.Y.A.”で聴くことができる構築的な楽曲を得意とする彼らだが、それに加えて本作では(先のシングル収録曲)“higher”でその一端をあきらかにした、引き算の美学に基づく“my world”や“night light”といったシンプルな楽曲もちらほら。それに加えて、男臭いファンクが展開されるラストの“real man's back”を顕著な例として、ある種のダサ格好良さが作品全体に貫かれている。
「“real man's back”とか、確かにそんな感じですよね。なんつーか、加齢臭が漂ってるような(笑)」(原)。
「シングルの時はリック・アストリー(英国のポップ・シンガー)を聴いたりしてて、〈ダッセエけどカッコイイなぁ〉みたいな(笑)、まぁ、そのスタンスは変わってないですね。メンバーそれぞれはもちろん聴いてるものが違ったりするんですけど、長くツルんでるぶん、話し合わずともお互いのツボがわかってるっていう」(荒井)。
必ずしも、聴いている音楽の影響がわかりやすい形で提示されているわけではないのが、このバンドらしくもあるのだが、荒井がリック・アストリーを聴いていたかと思えば、原はプログレッシヴ・バンド、イエスのベースを耳コピしていたり、それぞれが異なる音楽嗜好をバンドに持ち寄り、それを不自然な意図なしで発展させている彼ら。話だけ聞いていると、その制作現場を想像することは難しいが、ミュージシャンである以前に、この4人がいかに仲良く遊べるかということが何より大切だというから、目の覚めるような本作から判断するに、彼らを結ぶ目に見えない絆がより深まったということなのだろう。
「まぁ、技術面では多少成長したってことはあるかもしれないですけど、今回に関しては曲を作らなきゃいけなかったんで、なんも意識せず、いま自分たちが持ってたものを出した感じ。一瞬の俺ら、いまの俺らを閉じ込めたっていうことに尽きますね」(原)。
PROFILE
the band apart
98年結成。荒井岳史(ヴォーカル/ギター)、原昌和(ベース)、川崎亘一(ギター)、木暮栄一(ドラムス)から成る4人組。デモ音源を制作しながらライヴ活動を開始。2001年作“FOOL PROOF”、2002年作“Eric.W”のシングル2枚が各方面で高く評価され、実力・知名度を上げていく。それらがさらなる話題を呼び、2003年にはコンピ『DIVE INTO DISNEY』に参加。そこに収録された“星に願いを”は、その後シングル・カットもされている。同年のファースト・アルバム『K. AND HIS BIKE』リリース後、新たに自主レーベル=asian gothicを設立、イヴェント開催や作品をリリースを行う。5月11日にはセカンド・アルバム『quake and brook』(asian gothic)をリリースする。