Fall Out Boy
インディーでリリースされた2003年のファースト・アルバム『Take This To Your Grave』が本国アメリカで20万枚、ここ日本でも2万枚を越えるセールスを記録。一躍パンク・シーンの最前線に躍り出たシカゴの4人組が、このフォール・アウト・ボーイである。
「正直すごくヘンな感じだったね(苦笑)。なぜって、俺たちのことなんて誰も見向きもしないと思ってたから。あのレコードは基本的に仲の良い友人たちのためだけに作ったものなんだ。それがアメリカはもとより、遙か遠くの日本の人たちにまで受け入れられるなんてさ」(ピート・ウェンツ:以下同)。
昨年には初来日公演も実現させた彼らの次なるステップはメジャー・デビュー!
「(それまで所属していた)フェルド・バイ・ラーメンは大好きだった。ずっといっしょにやっていきたいと思っていたよ。だけどその一方で俺たちは、自分たちを次のレヴェルに押し上げる手助けができる人たちと仕事をする必要性を感じはじめていたんだ」。
バンドが置かれた状況の急激な変化に戸惑うことなく、あくまでも冷静かつ現実的にメジャー移籍を決めた彼らの判断は、青臭い理想論を語る〈インディー・バンド〉よりもよっぽど好感が持てる。
「ラジオで曲をかけてもらう機会が増えることやディストリビューションが広がることももちろんだけど、それ以上にレコードを作るときインディー時代よりも予算や時間をたっぷり使って曲作りやレコーディングに取り組めることが大きかった。だって、俺たちにとってはそれがいちばん大事なことだからね」。
ニュー・ファウンド・グローリーやイエローカードを手掛けたプロデューサー、ニール・アヴロンと共に作り上げたメジャー・デビュー・アルバム『From Under The Cork Tree』は、パンク・ファンに止まら
ず、より多くの人々に聴かれるべき作品だ。
「今回のアルバムはきれいなトーンでまとめたビッグ・ロック・サウンドをめざしたんだ。俺たちはロック・バンドとして見られたいんだよ。それに、パンク・シーンでも俺たちはどちらかというとアウトサイダーとして見られてきただろ? でも、俺らはいまロック・シーンで活躍しているどのバンドにも負けないぐらい本当にいろいろなタイプの曲が書けると思うんだ。そういうクォリティーの高い音楽をやっているってことを、みんなに知ってほしいんだ」。
リスナーの心を捉えて離さない曲作りにはすでに定評のある彼らだが、今作ではそのソングライティング力にさらに磨きがかけられている。従来の彼ららしいメロディック・ナンバーに加え、黒人コーラス・グループに歌わせてみたいグルーヴィーな“Dance, Dance”、バンドのスケールをダイナミックに描き出した“Sugar, We're Goin Down”、そしてライヴでもたびたびカヴァーしていたジョイ・ディヴィジョンの影響をモロに窺わせる“I've Got A Dark Alley And A Bad Idea That Says You Should Shut Your Mouth”など、従来の攻撃性を失うことなく多彩な楽曲にアプローチした今作は、彼らの限りない可能性をアピールしている。
「いろいろ新しいことに挑戦できて、ワクワクしているんだよ」。
ちなみに、マンロー・リーの有名な絵本「はなのすきなうし」に由来する〈コルクの木の下から〉という意味のアルバム・タイトルにもそんな心意気が反映されている。
「闘牛士と戦うよりもコルクの木の下で花の香りを嗅いで過ごすことが好きな雄牛の話なんだけど、そこには周りから期待されているとおりのことをやるのではなく、自分の心に決めた道を進んでいこうっていう実にあっぱれな志が描かれているんだよ」。
PROFILE
フォール・アウト・ボーイ
パトリック・スタンプ(ヴォーカル/ギター)、ピート・ウェンツ(ベース)、ジョー・トローマン(ギター)、アンディ・ハーレー(ドラムス)から成る4人組。2000年頃にシカゴで結成され、2001年にフェルド・バイ・ラーメンより7インチEP“My Heart Will Always Be The B-Side To My Tongue”をリリース。2003年にはファースト・アルバム『Take This To Your Grave』を発表し、全米で20万枚のセールスを記録。2003年~2005年の間に550回を超えるライヴを行って着実にファンを増やしていくなか、アイランドと契約。このたび、メジャー・デビュー・アルバム『From Under The Cork Tree』(Island/ユニバーサル)がリリースされたばかり。