JOE PERRY
待たせたな! 22年ぶり(!)のソロ作は、俺様の〈愛〉がたっぷり詰まった熱い一枚だぜ!!
エアロスミスをロックンロールの代名詞とするならば、ジョー・ペリーはそのクールさを象徴する人物ということになるだろう。彼の名をそのままタイトルに掲げた今作『Joe Perry』は、彼自身にとって生涯初の純然たるソロ・アルバムである。かつてエアロスミス離脱期にはジョー・ペリー・プロジェクトとして3作品を発表しているが、それらと比べれば作風も性質も動機も違う。
「あの頃の俺と今の俺は違うところにいる。当時はエアロスミスが壊滅状態にあったし、俺には新しいバンドを組んでライヴをやるために曲を作る必要があった。でも今回はそうした外部からの圧力とは無縁なところで作ったわけで、まさに音楽的にピュアな動機で作られたものだといえる。実際、ここ数年の間に自分の中にしまっておいた曲がたくさんあって、それらを世に出すのは〈いつか〉じゃ遅すぎると感じてた。そんな時ちょうどエアロスミスがオフを取ることになったんで、絶好のチャンスだと思ったのさ。それで自宅地下のスタジオにこもって作り上げた。とてもパーソナルな一枚になったね。まさに自分の日記から数ページを抜粋したかのような感じだよ」。
彼はこの作品においてドラム以外のすべてのパートを演奏し、もちろんヴォーカルも担当。インスト曲は2曲のみで、ギタリストのソロ作品というよりは、まさに彼という〈人間〉のソロといった趣だ。そして彼がここで体現してみせたのは、たとえばドアーズやウディ・ガスリーのカヴァー曲も物語っている、自身にとってのルーツ・ミュージックへの敬意と憧憬。これはエアロスミスの『Honkin' On Bobo』にも通ずるものだ。が、そうしたものをカタチにしつつも決して懐古趣味に陥ることのない現代的感覚もまた彼らしい。さらに、今から10年前、結婚10周年を記念して作られたという“Ten Years”が象徴するように、愛妻ビリーからのインスピレーションが今作の大きな部分を占めている事実もまた、彼自身の認めるところである。
「彼女の存在なしにこの手の歌を作ることは、俺にはできない。いわばこれらの歌詞ひとつひとつが過去20年に渡るロマンスの一部であり、アルバム全体がラヴソングなのさ。昔と変わらずに愛され続けている実感と同時に、今でも恋をしてる実感があるんだ」。
こんな言葉を吐いて様になるのも、この男くらいのものだろう。ちなみに無期限活動休止が伝えられていたエアロスミスのほうも、この秋にはライヴ作品を発表し、ツアー活動を再開する予定だという。夫妻の愛情もバンドの熱も永久に不滅、というわけである。
▼文中に登場した作品を紹介