インタビュー

SINDBAD

サンプリングの申し子か!? パーティーの現場から届いたオキテ破りの楽しさに、胸騒ぎが止まらない!


 渋谷宇田川町界隈になにやらオモロイ奴らがいる――そんな噂が飛び交う2003年の春、血気盛んなDJ4人はトリカブトをフィーチャーしたアナログ、その名も『SINDBAD E.P.』を世に送り出した。みずからのイヴェントのテーマ曲としてリリースされたその作品ですでに、彼らはパーティー現場主義を確固たるものとしていた。

「ふつうイヴェントってコンセプトがあるもので、例えばジャズ中心にとかヒップホップ中心にしようとかが多いと思うんですけど、僕らはその共通項が〈世代〉だったんですよ。そのかわりに、音楽的な繋がりがなんにもなかった。だからいまでもみんな音楽的にはぐちゃぐちゃです」(鳥井本英樹)。

 自分たちが現場でかけたい曲を作るというシンプルな理由は、ここにリリースされる初のフル・アルバム『SINDBAD』においても引き継がれている。

「80年代の音源にあった大雑把なサンプリングがすごく好きですね。作り込むのも好きですけれど、直感でババッとやるほうが好きなんです」(カネトシマサユキ)。

「“GAUCHE”とか、生楽器のダイナミズムを俺たちなりに料理したいなって、ラテン・パーカッショニストのKTa★brasilを入れたんです」(鳥井本)。

 また “DUMB FOUND”において、人気絶頂のYOUR SONG IS GOODによる生演奏とネタとスクラッチをまとめてサンプラーに突っ込んでみせるその男っぽい包丁捌きもさることながら、さらにそれを西(京都)の雄=HALFBYにリミックスさせるという心憎いまでのセレクトのセンス。さらには鳥井本が「エレクトロニックな感じでかつオールド・スクールを体現したくて、僕風にいうニュー・スクール・ブレイクスに仕上げた」と豪語する“A BRIGHT HANDLESS MAN”、そして小気味良いジングルに至るまで。彼らは単なるブレイクビーツ・ユニットと形容するに戸惑うほどのリズムのアイデアの多彩さ、その柔軟な姿勢と、反則スレスレの〈なんでもアリ感〉を振るっている。

「4人とも好みが全然違う。こんな時代で、テクノもハウスもロックも全部揃っちゃってたんですね。だから好きなものを全部詰め込んだら、自然にこうなったっていう感じなんですよね」(カネトシ) 。

 彼らがしがらみなしで奏でる、暴力的なアッパーさと懐の深いサンプリング・センスに、胸騒ぎしない奴などいるだろうか。
▼参加アーティストの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年06月30日 14:00

更新: 2005年06月30日 19:26

ソース: 『bounce』 266号(2005/6/25)

文/駒井 憲嗣