Can
初期4作がリイシュー! そこでカンの中心人物に直撃。そもそもカンって一体何者なのか?
ニューウェイヴ、テクノ/ハウス、音響派……解散してもなお多大な影響を与え続ける、ロック史上の比類なき〈確信犯的自由奔放〉バンド=カン。彼らの諸作が初の日本盤紙ジャケ仕様でリリース(第1弾は初期4タイトル)という快挙を遂げたいま、バンドの大黒柱ともいえるイルミン・シュミット(キーボード:以下同)に改めて当時の様子を語ってもらった。
「クラシック、現代音楽、フリージャズ、さまざまな分野の音楽家を集めてなにかをやりたかったんだ。なにが生まれるかわからない楽しみがあった。結果的にロック・グル-プになっただけで、その理由は自分たちでもよくわからんのだよ(笑)」。
偶然と必然が重なり合って導かれたメンバーと音楽性。「意図したわけではなかった」と言うが、そこには意識下で〈未知なる音楽の創造〉という強固な精神が働いていたことは間違いない。
「カンにリーダーはいなかった。集団的に、自発的に、先入観なしで音楽を作り上げていったんだ。どんな曲にも核となるテ-マがあって、私たちは各々がその核を追いかける感じで自由に演奏を行い、それがいつも自然に一体化していった」。
そうした即興的演奏のなかにあって、ファースト・アルバム『Monster Movie』ではマルコム・ムーニー、以降5作目まではダモ鈴木という異端にして破格の歌い手が大きな役割を担っていた。
「マルコムは素人ながら実にリズミカルで扇情的なインパクトがあったよ。ダモの発するデタラメな言葉は私たちにすら意味不明だったが(笑)、楽器のひとつとして完璧にバンドに合致していた。2人ともいわゆるロック・ヴォ-カルとはまるで異なっていた」。
数々のエレメントによって完成された珠玉の傑作群。彼自身はそんな歴史的名盤の数々を一体どのように評価しているのだろう。
「子供みたいなものだよ。生まれて成長して親元を離れていく。だから私が彼らを振り返ることはほとんどない。子供たちは完全にひとり歩きをして、多くの人々に影響を与えているようだからね」。
リリースから30年以上を経たいまも、強靭な革新性を秘めて輝き続ける〈恐るべき子供たち〉に接するには、今回のリイシューはまさに絶好の機会。深遠なるカン宇宙へぜひとも足を踏み入れてほしい。
▼このたびリイシューされたカンの初期作品を紹介。